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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】
迷惑動画を拡散する懲りない面々 ネット教育・厳罰化が急務

2023/04/19

4月18日(火)、産経新聞にコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「迷惑動画を拡散する懲りない面々 ネット教育・厳罰化が急務」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

回転寿司チェーン「スシロー」など飲食店で湯飲みやしょうゆボトルの口をなめ回すなどの不衛生な行為を撮影し、動画をインターネット上の交流サイト(SNS)にアップする迷惑行為が頻発している。続々と逮捕者も出ている。被害を受けた飲食店の多くは「お客さまとの信頼関係を損なう重大な事案」であり、「事件の調査を進め、刑事・民事の両面から厳正に対処する」と発表した。これは当然の対応である。

こうしたくだらないSNS上の迷惑動画を見るにつけ、ネット教育の不足を痛感する。迷惑動画を面白半分で拡散すれば、刑事・民事で責任を問われ、高額な賠償金の支払いや社会的に抹殺される可能性もある。このことを子供の頃からしっかり教育すべきである。

仮に未成年であっても、親も子も「子供がやったことだから」「軽い犯罪だから」となめていてはいけない。SNSには、そうした甘えを許さないほどの強烈な影響力・破壊力がある。実際にスシローの株価は下落し、億単位の損害が生じている。

「12歳以上の子供の9割がスマホを持っている」というデータがある。迷惑動画による加害者・被害者を生まないためにも、小学生の頃からSNSの使い方、消えないデジタルタトゥーの怖さ、最新のSNS事例などのネットリテラシー教育を充実させていくべきである。ネットの情報や事象を正しく理解し、適切に判断、運用できる能力を養わなくてはならない。

また、法改正による厳罰化も検討すべきであろう。昨年、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策強化を目的として、侮辱罪の法定刑を引き上げる改正刑法が施行された。これはSNSで誹謗中傷を受けた女子プロレスラーが自殺した問題で、加害者の処罰がわずか科料9000円にとどまったことから、厳罰化を求める声が高まっていたことによるものである。

飲食店での迷惑動画をSNSにアップすることは偽計業務妨害罪に当たるが、法定刑は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」と比較的軽い。インターネットが無かった頃とは違い、SNSの影響力・破壊力を考えれば、偽計業務妨害罪の法定刑引き上げも視野に入れるべきである。

さらに、運営元であるYou Tube(ユーチューブ)、親会社のGoogle(グーグル)の責任も見逃せない。

いわゆる「ユーチューバー」は迷惑動画をアップして再生回数が増えれば広告収入が上がる。再生回数を増やすためには「何でもあり」という風潮に歯止めをかけるべきである。ユーチューブは迷惑動画も含めた動画再生による広告が主な収入源であるから、企業としての社会的責任は極めて重いはずである。

海外では、ユーチューブに投稿された動画が人種差別的な内容や誹謗中傷を含むとして、親会社のグーグルにも削除を求めたのに応じなかったという事案で、グーグルに対して損害賠償を命じた裁判例がある。グーグルは削除要請などを通じて動画の内容を知ったにもかかわらず、収益を上げるために公開を続け迷惑動画の拡散を後押しした加害責任があるとされたのである。

インターネットやSNSの急速な普及に伴い、以前では考えられなかったような誹謗中傷、業務妨害が深刻な状況となっている。SNSによる新たな加害者・被害者を生まないためにも早急な対策が望まれる。

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