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「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」産経ニュースコラム10月22日(木)掲載されました。

2015/10/22

10月22日(木)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「国民から見放される「弁護士会の政治的主張」」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

国民から見放される「弁護士会の政治的主張」

安倍政権の安全保障関連法案(安保法案)は、9月19日に無事に可決・成立したが、日本弁護士連合会(日弁連)や全国の弁護士会は、廃案を求める会長声明や意見書を出したり、デモ行進を行ったりするなど、大々的な「安保法案反対!」キャンペーンを展開した。わが福岡県弁護士会でも、歴代の会長職にあった人達が法案反対の記者会見を開いたり、街頭でプラカードを持って行進したりするなど、今までにない光景が繰り広げられた。

しかし、そもそも、会員である弁護士の中には、私のように「安保法案に賛成、集団的自衛権は合憲」という立場の弁護士も多数いるわけだから、そのような政治的意見が分かれることに関して、あたかも全ての弁護士が反対しているかのような声明を出したり、抗議活動をしたりすべきではない。

既に、京都の保守派弁護士が、特定の政治的な会長声明や意見書について、「弁護士自治とは全く無縁な『目的外の行為』であり、違法だ」として、弁護士会長らに対しホームページ上の会長声明や意見書の削除と慰謝料を求める裁判を起こしている。「法律上、弁護士は弁護士会への強制加入が義務づけられている」「日弁連は特定の意見を表明する政治団体になり下がっている。主張したいならば強制加入の団体ではなく、賛同者を集めて任意でやるべきだ」ということだ。このように、弁護士会が特定の政治的声明を出すことを問題視する声が徐々に広がりつつある。

戦後になって、弁護士会には「弁護士自治」が認められた。これは、戦前は司法大臣が監督権を有しており、対立する検事や裁判所の請求によって次々と弁護士の懲戒がなされ、その結果、多くの政治犯や思想犯が投獄されるという全体主義的な暗い歴史の反省から生まれたものである。したがって、戦後の弁護士会には、いわゆる監督官庁はなく、権力から独立し自治によって職業集団としての個々の弁護士の活動が保証されている。つまり、「自分たちできちんとやれるから、国家権力からコントロールはされない。それがひいては国民のためになる」ということから、「弁護士自治」が認められているのである。

ところが、一連の大々的な安保法案反対キャンペーンは言うに及ばず、最近の日弁連・弁護士会は、「弁護士自治」をいいことにやりたい放題。「会長声明」の名を借りて、一部の左翼系弁護士が自分たちの政治的主張をあたかも弁護士全体の主張であるかのように政治利用している。この人達は、「安保法案反対の会長声明は、政治的意見ではなく、あくまでも法律家としての見解だ!」と主張している。

しかし、国際社会の現実を直視せず、なぜ安保法案が必要なのか?という視点も議論もないままに、全ての弁護士が安保法案や集団的自衛権に反対しているかのような言動が続けば、国民は「弁護士会は政治的中立性を損なっている!」としか思わず、弁護士会に対する信頼は失われてしまう。「弁護士自治」は、あくまでも国民の信頼があってこそのものだ。しかも、今や、弁護士の不祥事が多発し、悪しき司法改革によって弁護士の質の低下も問題となっており、「弁護士会に自浄能力はあるのか?」と疑われ始めている。

結局、「弁護士自治の剥奪」「弁護士会の解体」となれば、「国民の人権を守る」という本来の弁護士の重要な使命が損なわれ、そのツケは国民に回ってくる。くだらない「会長声明」を出して喜んでいる場合ではなく、本来の「弁護士自治」の意義をしっかりと考えて、実践していかなくてはならない。


 
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