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【タックル法律講話】性犯罪の厳罰化! 泣き寝入りによる第2、第3の被害者を出さないためにも 画期的な改正ですが、運用に工夫が必要です

2017/03/17

性犯罪の厳罰化!
泣き寝入りによる第2、第3の被害者を出さないためにも
画期的な改正ですが、運用に工夫が必要です


求められる厳罰化

現在、法務省は、性犯罪を厳罰化するための刑法改正案を国会に提出する方針です。その内容は次のとおりです。①懲役3年以上となっている強姦罪の法定刑の下限を「5年以上」に、また、無期又は懲役5年以上となっている強姦致死傷罪の下限を「6年以上」とする、②18歳未満の子供に対し、親などが「監護者」としての立場を悪用して性行為をすることを罰する「監護者わいせつ罪」の新設、③現在の「強姦罪」は、男性が加害者、女性が被害者であることを前提とした規定であるが、性差を廃止し、男性が被害者、女性が加害者となるような性犯罪も処罰する、④被害者の告訴が必要な「親告罪」である強姦罪などを、告訴が不要な「非親告罪」とする。
まず、①の厳罰化については、性犯罪は被害者に多大な精神的苦痛を与える卑劣な犯罪ですので厳罰化は必要ですし、抑止力の効果も期待できます。
また、②は卑劣な親から被害を受ける子供たちを守るために必要な改正です。
さらに、③は時代の流れということでしょう。実際、女性上司に性交を迫られたり、セクハラ被害を受けた若い男性社員の被害事例も多く報告されています。これによって、明治時代から続いた「強姦罪」の名称はなくなり、「強制性交等罪」という名称となります。

性犯罪者は繰り返す!

問題は、④の非親告罪化です。
現在の刑法では、強姦罪や強制わいせつ罪は、被害者のプライバシー保護などを考慮して「親告罪」となっています。被害者が「告訴する」と言わない限り、犯人を処罰できないのです。現実にも、被害者が犯人の報復や被害が公になることを恐れて告訴に至らず、「泣き寝入り」で表に出てこないケースがかなりあります。
これが「非親告罪」になると、殺人罪などと同じく、被害者が告訴しなくても処罰できることになります。これによって、今まで、被害者が告訴せずに泣き寝入りし、何食わぬ顔でいた性犯罪者に対しても、捜査の手が及ぶことになります。
今までは、犯人は、被害者と和解して告訴を取り下げてもらえば、処罰されなかったのですが、「非親告罪」となるとそれができなくなります。性犯罪者は、極めて再犯率が高く、同じことを繰り返しますから、性犯罪者を処罰せずに再び社会に戻してしまうことは、第2、第3の被害者を作ることになってしまいます。そういう意味では、今回の改正は、被害者の意思よりも、社会の治安を守るという側面を重視したものと言えます。
ただし、現実の捜査では、被害者が捜査協力を拒めば、被害者の調書が作成できず、立件が難しくなります。また、仮に、被害者が調書作成に協力しても、その後の裁判で犯人が「合意があった」などと主張して犯罪を否認すると、被害者が法廷に出て被害状況を証言しなくてならなくなりますので、被害者の心理的負担はかなり重くなります。被害者のプライバシーや精神的トラウマなど、これまで以上に被害者保護を充実させないといけません。運用のあり方に工夫が必要になります。それでは次号で!