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【タックル法律講話】いよいよ「共謀罪」が新設? 多発する組織犯罪への対策が必要ですが、 問題は実効性です!

2017/02/17

いよいよ「共謀罪」が新設?
多発する組織犯罪への対策が必要ですが、
問題は実効性です!


「共謀罪」の必要性

国会では、組織犯罪処罰法の改正として「共謀罪」の新設が議論されています。「共謀罪」は過去に3度も廃案になった経緯があり、今国会で成立するか注目が集まっています。「共謀罪」は、実際に犯罪を行わなくても、犯罪を共謀した段階で検挙・処罰することができるというものです。
この法案の廃案が繰り返されてきたのは、「警察権力が労働組合や市民運動を狙い撃ちにするのではないか?」といった批判からでした。暴力的な労働争議など無くなった今の時代では的外れの批判なのですが、このような批判を避けるために、今回の法案では、それまで「団体」としていた適用対象を、「組織的犯罪集団」に限定しています。政府は、「暴力団による殺傷事件や悪徳商法などの組織的犯罪が対象で、国民の一般的な社会活動が共謀罪にあたることはない」と説明しています。
既に米国や英国などでは設けられている共謀罪ですが、政府が成立を目指す背景には、2000年の国連総会で採択された国際組織犯罪防止条約があり、この条約に加入するためには、「共謀罪」を定めた国内法の整備が必要とされているという事情があります。
日弁連などの左翼系反対勢力は「実行していないのに、頭の中で考えただけで処罰するのは思想の取締まりだ!」というアレルギーがありますが、現実に多発する組織犯罪とその巧妙化・潜在化から国民の安全を守るためには、「共謀罪」導入が必要であることは明らかです。「組織的犯罪集団」の適用事例も、暴力団員等による組織的な殺傷事犯や悪徳商法のような組織的詐欺事犯などに限られており、巷で言われているような、居酒屋で酔って「あいつが気に入らないから殺そうか?」と気焔をあげるだけで捕まるようなことはあり得ません。


問題は実効性!法整備もセットで議論を!

気になるのは、適用される組織的犯集団の中に、カルト宗教団体や過去にテロを起こした中核派、革マル派などの極左集団が入っていないことです。「共謀罪」は、本来テロ等から国民を守るためのものですから、テロを起こす可能性がある集団には少なくとも適用すべきではないでしょうか?また、ISなどの海外のテロ集団にも適用すべきでしょう。
さらに、問題は実効性です。「共謀」は密室で行われますから、その証明は極めて困難です。日本では、アメリカのように一般的な「通信傍受」は認められていません。また、共謀に参加していた人物から証言を得るためには、その人物の身の安全を保証してあげない限り、有効な証言を得ることはできません。証言した人間が「裏切り者」として危害を加えられる危険性があるからです。アメリカでは「証人保護プログラム」によって、証人の戸籍、名前を変えて他の地域で別人として安心して暮せるようにできる仕組みがあります。そのような仕組みがない日本で、果たして、「共謀」の証拠が得られるのか?立件のハードルはかなり高そうです。
今後は、立件するための法整備もセットで議論しなくてはなりません。それでは次号で!