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【タックル法律講話】刑法犯の48%が再犯者!高齢者の4割は半年未満で再犯に及ぶ・・・ 社会全体の問題として捉える必要があります。

2017/01/17

刑法犯の48%が再犯者!高齢者の4割は半年未満で再犯に及ぶ・・・
社会全体の問題として捉える必要があります。


高齢者の再犯率の高さ!

平成28年版「犯罪白書」によると、刑法犯として摘発された人のうち48%が以前に摘発されたことがある再犯者でした。また、刑務所を出て5年以内に再び罪を犯した65歳以上の高齢者のうち4割が、再犯に至るまで半年未満でした。刑法犯の全体数は、近年、減少傾向にありますが、再犯者率(摘発人員に占める再犯者の割合)だけをみると、平成27年まで19年連続で上昇しています。また、再犯までの期間は、高齢になればなるほど短くなる傾向があります。
高齢者の多くが再犯者になってしまう背景は、生活の行き詰まり、孤独などです。常習窃盗、無銭飲食など、軽い犯罪を繰り返す人がかなりいます。冷たい世間よりも、刑務所の方が寝る場所、食べ物がありますから、刑務所生活に慣れてしまいます。
再犯率を抑えることが喫緊の課題ですが、現実にはなかなか困難です。刑務所で更正プログラムを受けても、刑務所から一歩出て社会に戻れば、お金もない、働く場所もない、助けてくれる人もいない。その結果、再び、無銭飲食、窃盗などに走ってしまうのが現実です。犯罪者の約5割が再犯に及んでしまうのですから、そもそも、更正プログラム自体にあまり効果がないとも言えます。
出所者の受け皿として、保護観察制度や出所者を受け入れてくれる企業の社長さんもいますが、まだまだ少数派です。現実には、犯罪者のレッテルを貼られたままでは雇う企業もかなり限られてきます。


危険な「教育刑」的発想

どうしたら、彼らの社会的な居場所を作ることが出来るのか?社会的なインフラ整備が必要です。例えば、出所者を一つの施設で雇用して仕事を与える、というのも一案です。
これに対しては、「犯罪者だから自業自得。そこまでしてやる必要はない。」と考える人も多いと思います。しかし、出所者に更生の道を歩んでもらい再び罪を犯さないようにすることは、我々自身の安全・安心にとっても大切なことですから、犯罪者の更生支援は社会全体の問題として捉えざるを得ないのです。
刑罰の考え方に、「応報刑」と「教育刑」というものがあります。日本をはじめ多くの国は、犯罪の軽重によって刑罰の軽重を決める「応報刑」的な考え方です。これに対して、「教育刑」は犯罪者を教育して改善されるまで刑を与え続ける、というものです。改善したかどうかは判断する者の主観に委ねられますから、「まだ改善していない」とされれば、いつまでも刑務所から出られません。究極は、犯罪者を社会から永遠に「隔離」することになります。一度でも罪を犯した者は無期限で刑務所に放り込んでおく、という危険な発想にもつながります。
しかし、これだけ再犯率が高く、更生が困難となると、社会防衛の観点から、「教育刑が必要だ!」という主張が台頭してくる可能性もあります。難しいテーマですが、しっかりと議論を深めていく必要がありますね。今年も御愛読よろしくお願いいたします。それでは次号で!