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【タックル法律講話】いつまでも消えないネット上の情報! 「忘れられる権利」はどこまで認められるのか?

2016/09/17

いつまでも消えないネット上の情報!
「忘れられる権利」はどこまで認められるのか?


逮捕情報には公共性がある?

今の時代は、いったんネット上に情報が載ってしまうと、一瞬にして拡散し、いつまでも消せないという恐ろしい時代になりました。児童買春・児童ポルノ禁止法違反で罰金50万円が確定した男性が、インターネット検索サイト「グーグル」に対し、「事件から3年以上経つのにいまだに名前を検索すると自分の逮捕情報が出てくる。忘れられる権利があるはずだ!」として自己の逮捕情報の削除を求めた仮処分を申し立てました。
原審のさいたま地裁は男性の主張を認めましたが、先日、東京高裁は「児童への性犯罪の逮捕歴は公共の利害に関わる。時間経過を考慮しても逮捕情報の公共性は失われていない。忘れられる権利は法的に定められたものではない。」などとして男性の主張を認めませんでした。
私もネット上で情報収集をすることはありますが、この情報ソースはほとんどが報道記事です。そして、報道記事はほとんどが警察発表によるものですが、この警察発表はいたって恣意的なものです。例えば、有名人や有名企業の社員などが逮捕されれば実名報道されますが、公務員や外国人が逮捕されれば匿名の時もあります。つまり、警察による一次情報の公平性はありません。報道各社の恣意も働くでしょうから、さらにフィルターがかかります。
また、本来は、逮捕されただけでは無罪かもしれない「推定無罪」が原則ですから、逮捕の段階で実名を公表すること自体にも慎重でなくてはなりません。特に、「痴漢」は冤罪も多く、逮捕された段階で実名がネットに出回りそれが消えないのであれば、「二重の被害」と言ってもいいでしょう。
それでも、無罪の判決結果をきちんとマスコミが掲載してくればまだましですが、大きな事件以外は一切報じられません。ネットの世界では、一度書かれてしまえば、真偽は別にして、情報だけが独り歩きしてしまいます。

ネットはあくまでも私的な空間

今回の男性のケースは「児童への性犯罪」ですから、「公共性がある」という高裁の判断も理解できなくはありません。
しかし、性犯罪者の情報が「公共性」というのであれば、本来は、アメリカの「ミーガン法」のように公的な制度によって性犯罪者の名前や住所を公表して再犯を防止する対策をとるべきです。そのような制度を採ることもなく、あくまでも私的な空間であるインターネット上に逮捕歴をずっと掲載したままにしておくということが、公益につながり、再犯を防ぐ抑止力になるとは思えません。
やはり、ネット上の逮捕情報に公共性があるというのは無理があると思います。逮捕歴がネット上に半永久的に晒されたままでは、一度処罰を受けても、死ぬまで、いや死んだ後も、ずっと社会的制裁を受け続けることになり、更正の道を阻み、家族にも無用な負担を強いることになってしまいます。
重大犯罪は別ですが、法定刑が軽微な犯罪については削除を認めるべきではないでしょうか?そして、性犯罪のような再犯性が高い犯罪については、私的空間であるネットではなく、国家が積極的に関与して情報を公開・管理する公的制度を整備すべきだと思います。それでは次号で!