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【タックル法律講話】「顔を覚えとるけんね~」-裁判員への声かけで四人が辞任! 裁判員制度は欠陥だらけの悪法です。

2016/07/17

「顔を覚えとるけんね~」-裁判員への声かけで四人が辞任!
裁判員制度は欠陥だらけの悪法です。


「裁判」は危険なものである。

福岡地裁小倉支部で殺人未遂罪に問われた暴力団工藤会(北九州市)系組幹部(40)の裁判員裁判で、複数の裁判員が裁判所を出たところで、2人組の男に「顔を覚えとるけんね~」などと話しかけられるという事件が発生しました。裁判への影響を考慮して、裁判員6人中4人が辞任し、判決言渡し期日も延期されました。
工藤会については、裁判員裁判がすでに6件も「除外」されています。理由は「組織的背景があり危険」ということですが、今回の裁判は幹部が個人的にやった事件であり組織性はないということで、「そこまで危なくはないだろう」との判断で除外されませんでした。あまり「除外」を多くしてしまうと裁判員制度そのものの意義がなくなってしまうので、裁判所としてはなるべく「除外」は認めたくないという配慮があったのかも知れません。
しかし、このような「声かけ」事件が起こることは容易に想定されました。裁判員は裁判所の中ではそれなりに保護されていますが、裁判所から一歩外に出れば、何の保護もなく、誰も守ってくれません。
「開かれた司法を!市民感覚の裁判を!」の大合唱のもとに裁判員制度を導入し、裁判員を経験した9割の人が「いい経験になった」と答えていますが、刑事裁判は「真実発見と適正手続」を目的とする制度であって、参加した一般市民を満足させるためのものではありません。刑事裁判はそんなに甘いものではありません。イタリアではマフィアに有罪判決を下した裁判官が爆弾で殺されるくらいですから、本来、「裁判」は危険なものであり、命懸けなのです。


悪法は廃止すべき

やはり、裁判、とくに刑事裁判についてはプロの裁判官に任せるべきです。プロの裁判官はそれなりに安全も確保され、身分も保障されていて厚遇ですからね。そもそも、裁判員裁判の対象となる事件は、殺人・放火・身代金誘拐・覚せい剤など凶悪なものが多くプロでも覚悟が必要で、一般人が興味本位や義務感で参加するものではないと思います。どうしても「司法に市民感覚を取り入れよ!」というのであれば、政治家の汚職や談合事件などを対象にした方がよっぽど意味があると思います。
このコラムでも「裁判員制度は無意味で弊害が大きい悪法だ!」と指摘してきましたが、残念ながら制度は定着しつつあり、今後も廃止はされないでしょうね。
そうであるならば、裁判員制度を国民に押し付け義務付けている以上、国家には、裁判員の生命・身体の安全を守る義務があります。裁判員を車で送迎するなど物理的で具体的な保護対策を充実させなくてはなりません。
今回の事件では声かけした2人組の男は裁判員法違反で逮捕されましたが、今後の捜査・裁判では、声をかけられた裁判員たち自身が改めてこの件を法廷で証言しなくてはならないという事態も考えられます。ここまでして裁判員制度を続ける意味が全くわかりませんよね。悪法は早く廃止すべきです。それでは次号で!