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【タックル法律講話】大麻所持で逮捕された末期ガン患者が「生存権の行使だ!」と無罪を主張。 無罪を勝ち取るのは難しそうですが、そもそも「どうして大麻はダメなの?」という根源的な論議にも発展しそうです

2016/06/17

大麻所持で逮捕された末期ガン患者が「生存権の行使だ!」と無罪を主張。
無罪を勝ち取るのは難しそうですが、そもそも「どうして大麻はダメなの?」という根源的な論議にも発展しそうです


責任を問えるのか?

大麻を所持していたとして大麻取締法違反罪で逮捕・起訴された末期ガン患者の男性(58)の裁判が注目を集めています。なぜ注目を集めているかというと、この男性が、「末期ガンで全ての医師から見放されたが、大麻がガンに効果がある可能性を知り、治療のために自ら栽培し使用したところ症状が劇的に改善した。これは憲法で保障された生存権の行使だ!」と無罪を主張しているからなのです。取締法では、大麻の医療目的での使用も全面的に禁止していますが、弁護側は「生存権の行使だ」「緊急的な措置だった」と主張する方針のようです。
法律的に言うと、大麻を所持していたのは事実なので、あとは、責任を問えるのか?という点ですね。自分が生きるためにどうしても大麻を使わざるを得なかったのか?ということが論点になります。大麻がガンに効果があるかどうかは医学的にはまだ証明されていませんし、仮に無罪を認めてしまうと、医療用に使用する大麻が蔓延する結果になる恐れがありますから、裁判所としては無罪にはしにくいでしょうね。


タバコ、アルコールは合法なのに…

ただ、よく考えてみると、そもそも、なぜ大麻は日本で全面禁止されているのか?という疑問にぶつかります。大麻取締法は戦後の昭和23年に制定されました。しかし、大麻より習慣性、毒性が強いとされているアルコール、タバコが合法なのに、なぜ大麻が禁止されているのか?よく考えてみれば不思議ですね。欧米各国では多少の吸引や所持はお咎め無しになっている国が多いのに、日本では、無許可所持の最高刑が懲役5年、営利目的の栽培は最高で懲役10年の厳しい刑になっています。なぜここまで厳しいのか?
もともと、大麻は麻織物の原料であり、戦前の日本では盛んに栽培されており、日本人の生活には欠かせないものでした。丈夫で長持ちする布や紙ができるので大麻は重宝がられていたのです。また、鎮痛、食欲増進作用などで昔から使われていましたし、現在も海外で医療用に使えないか研究されているそうです。
そうした大麻の「良い面」を封印したのはなぜか?実は、アメリカのGHQによる占領政策の一環であり、アメリカの合成繊維、製紙、医薬メーカーを保護するためだったと言われています。「なぜ大麻はだめなのか?」が全く議論されずに今に至っているのではないでしょうか?
大麻を解禁してしまうと、より強い薬物に走りやすくなってしまうという「ゲートウェイ理論」もありますが、有害性ならばタバコ、アルコールも禁止すべきであり、あまり説得力がありません。
そもそも、犯罪を取り締まる理由は、個人的法益、社会的法益、国家的法益を守るためなのですが、「大麻」の場合は、どの法益を損なうことになるのでしょうか?「有害」でいえば、アルコール中毒の方がもっとタチが悪いでしょう。「GHQの占領政策、恐るべし」ですね。裁判の行方が注目されます。それでは次号で!