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【タックル法律講話】オウム真理教元信者・菊池直子に逆転無罪判決! 17年前の記憶は信用できない?! テロとの戦いは前途多難です。
2016/01/17
オウム真理教元信者・菊池直子に逆転無罪判決!
17年前の記憶は信用できない?!
テロとの戦いは前途多難です。
「故意=主観面の立証」の難しさ
オウム真理教が1995年に起こした東京都庁郵便小包爆発事件で、爆薬の原料を運んだとして殺人未遂幇助(ほうじょ)などの罪に問われた元信者・菊池直子(43)の控訴審判決が、昨年11月27日、東京高裁で言い渡されましたね。裁判長は「テロ計画の認識があったとは確認できない」として、懲役5年とした一審・東京地裁の裁判員裁判による判決を破棄し、無罪を言い渡しました。
以前もこのコーナーで指摘しましたが、裁判員が参加して出した一審の判決を高裁がひっくり返したわけで、市民参加の司法を目指して導入された裁判員制度が全く形骸化しています。何のための制度なのか?参加して懲役5年の判決を出した裁判員の人たちの心境は穏やかではないでしょう。
もう一つの問題点は、検察側の「故意=主観面の立証」の難しさです。要するに、「運んだ物が犯罪に使われることを菊池氏が認識していたかどうか」を客観的に立証しなければなりません。「知っていたんだろ?」と訊問しても「知りませんでした」と否認し続けるので、間接的な証拠で外堀を埋めていく方法しかありません。その証拠固めによって、最終的に「知っていたはずだ」という故意=主観面を立証するわけです。
一審では、オウム元幹部の井上嘉浩死刑囚が「爆薬の原料を運んだ菊池さんをねぎらったら『頑張ります』と答えた」「菊池さんから『警察に見つかれば逮捕される』と聞いた」と詳細に証言し、これが決め手となって有罪判決となりました。
テロとの戦いに備えて
ところが、高裁の裁判官は、「他の多くの証人が、当時の記憶が曖昧で具体的な事実を思い出すのに苦労しているのに対し、井上死刑囚の証言は、17年も前のことを詳細かつ具体的に証言しており、不自然で信用できない」として切り捨ててしまいました。
しかし、それでは、菊池氏が17年間も逃亡していたことの説明がつきません。罪の認識があったからこそ、菊池氏は逃亡したのではないでしょうか?また、17年前のことであっても、鮮明に記憶が蘇ることもあり得ます。
今回の高裁の無罪判決に対しては、「疑わしきは被告人の利益」という刑事裁判の大原則を貫いた素晴らしい判決だ、と評価する声もありますが、違和感を覚えた方も多かったのではないでしょうか。
サリン事件をはじめオウム真理教は、日本社会に対してテロを仕掛けました。何の罪も無い一般大衆を犠牲にした罪は到底許されるものではありません。「故意=主観面の立証」のハードルは高いですが、テロとの戦いのためにも、効果的な法整備、対策が求められます。
今年もよろしくお願いします!