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【タックル法律講話】相次ぐ高齢者の運転による悲惨な交通事故! 道交法の改正だけではなく、「認知症対策」として総合的な取り組みを!

2015/12/17

相次ぐ高齢者の運転による悲惨な交通事故!
道交法の改正だけではなく、「認知症対策」として総合的な取り組みを!


事故原因の4割が「認知機能の衰え」

先日、宮崎市内で、軽乗用車が暴走して歩行者を次々と跳ね飛ばし、2人が死亡、4人が重軽傷を負うという痛ましい事故が起きましたね。運転していた男性(73歳)は、事故の二日前に認知症の治療で入院していたそうです。
近年、高齢者の運転による交通事故が相次いでいます。信号無視、高速道路の逆走、アクセルとブレーキの踏み間違えなど、普通では考えられないような事故が起きています。高齢者による事故のうち、約4割が認知機能の衰えが原因とされています。
その対策として、今年6月に改正された道路交通法では、75歳以上で認知症の恐れがあるとされた場合、医師の診断を義務づけ、認知症と診断されれば、免許取消しや停止処分となることになりました。
今回の宮崎の事故では、運転者の男性は数年前に認知症の症状が出て、何度か交通事故を起していたそうですから、なぜ免許を持っていたのか疑問ですね。また、高齢者のみならず、若年性認知症患者もいますので、年齢を問わない検査の実施や医師の通報の義務化など、さらに実効性ある法改正が必要です。
ただ、現在、65歳以上の認知症患者は約439万人と推計されており、これに「軽度認知障害」(約380万人)を加えると、65歳以上の4人に1人が認知症とその「予備軍」と言われています。そうすると、道交法を改正しただけでは不十分であり、「認知症対策」として総合的に取り組まなくてはなりません。


被害者救済の視点も重要

いくら法律を改正しても、認知症の人は、免許を持っていようが持ってなかろうが、車のキーを見つけたら運転してしまうでしょうから、結局は、キーを持たせないなど家族の物理的な見守りを強化するしかありません。「運転できないようする」指紋認証システムなどの義務化も検討すべきでしょう。
一方で、事故の被害者の救済も重要な課題です。事故を起こした認知症患者本人は認識がありませんから、責任能力がないと判断されたり、本人に賠償能力がなかったり、保険適用がない場合は、被害者は泣き寝入りです。そうなると、その家族の監督義務が問われることになります。今回の宮崎の事故でも、「なぜ、家族は車のキーをちゃんと管理していなかったのか?」と責任追及される可能性もあります。過去には、認知症患者が線路に飛び込んで列車を遅延させたとして、家族が鉄道会社から訴えられて賠償命令が出たケースもあります。
これは、認知症患者を持った家族にとって深刻な問題です。受け入れ施設が無いから自宅で面倒を見ざるを得ず、家族自身も働いていたり、高齢であれば、限界があります。家族にしてみれば「精一杯やっているのに…」と言いたくもなるでしょう。被害者救済の視点からは、本人だけでなく、配偶者や同居の家族らが賠償を求められた場合も補償対象になる「個人賠償保険」加入の義務付けも検討すべきでしょうね。それでは、次号で!