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【タックル法律講話】福島原発事故で東電の勝俣元会長らが「強制起訴」に! 「検察審査会」は検察の捜査に対して「市民感覚」を反映させる制度です。

2015/09/17

福島原発事故で東電の勝俣元会長らが「強制起訴」に!
「検察審査会」は検察の捜査に対して「市民感覚」を反映させる制度です。


「検察審査会」の役割とは?

先日、東京の検察審査会が、東京電力の福島原発事故により業務上過失致死傷罪で告発されていた勝俣恒久元会長ら旧経営陣3人について、「起訴すべき」と議決しましたね。議決では「原発事業者(東電)には、発生の可能性の高低に関わらず、あらゆる危険性に備えた措置を講じておく義務があるが、東電はこれを怠った」と指摘されており、これによって3人は強制的に起訴され、刑事裁判が始まることになります。
この問題では、平成24年、市民団体が、東電や政府の関係者ら計42人を「津波対策を怠った」として告発していましたが、東京地検は「予見は困難であり、刑事責任は問えない」として、全員を不起訴にしました。ところが、これを不服とする市民団体が検察審査会に申し立てを行い、2回の審査を経て、今回、ようやく勝俣元会長らの強制起訴が決まったのです。強制起訴は平成21年5月の制度導入以来、全国で9件目になります。
検察審査会は11人の一般人で構成され、検察官の不起訴処分に対して不服がある被害者などからの申立を「市民感覚」で判断し、あらためて起訴すべきかどうかを審査するものです。市民感覚を反映させる司法制度改革の一環として平成21年に始まりました。「起訴すべき」(強制起訴)と判断された場合は、裁判所から選任された「指定弁護士」が検察官役として主張・立証を行うことになります。
日本の刑事裁判の有罪率は9割を超えていますが、これは裏を返せば、検察が確実に有罪になる手堅い事件しか起訴しない、ということでもあります。起訴するかしないかは検察の自由ですから(これを「起訴便宜主義」といいます)、有罪に持ち込めないと思えば、起訴しないことも多々あります。官僚組織の保身、点数主義の弊害とも言われていますが、この起訴便宜主義に歯止めをかけて「市民感覚」を反映させよう、というのが検察審査会の制度なのです。


「不起訴」という藪の中に光を当てる

しかし、検察が起訴しなかった案件について、あらためて検事役を務める弁護士が検察以上の証拠を出して有罪に持ち込むことは極めて困難ですので、有罪になることは稀です。平成23年には、あの小沢一郎も政治資金規正法違反で強制起訴されましたが、結果は無罪でした。同じく、今回の東電関係者らも無罪になる可能性は高いでしょう。
しかし、もし、これが不起訴のままだったら、福島原発事故の本当の原因は藪の中のままです。事故原因の一つに、非常用ディーゼル発電機が津波で使用不能になって電源が喪失したことが指摘されていますが、本当に東電は「予見」できなかったのでしょうか?国民にはその実態はわからないところであり、今後の刑事裁判で、東電がどのような取り組みをしていたのかが明らかになる可能性があります。
仮に無罪になったとしても、何が起きていたのか?何が原因だったのか?が被害者や国民に知らされる、という意義があり、検察審査会による強制起訴は、「不起訴」という藪の中に光を当てるものと言えますね。今後の裁判の行方が注目されます。それでは次号で!