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【タックル法律講話】身分を隠してローン契約した暴力団員と妻を逮捕! 社会からの一切の排除は難しい問題です。
2018/03/02
身分を隠してローン契約した暴力団員と妻を逮捕!
社会からの一切の排除は難しい問題です。
ますます強まる「暴排」の風潮!
暴力団員であることを隠して、住宅リフォームのためにローン契約の保証人となり融資金をだまし取ったとして、静岡県警は、詐欺の疑いで指定暴力団極東会系組員とその妻を逮捕しました。
逮捕容疑は、平成二十五年、夫が暴力団員であることを隠して、妻を借主、夫を保証人とする住宅リフォーム代金のローン契約を結び、融資金一千万円をだまし取ったというものです。この金融機関では暴力団員を保証人とするローン契約を禁じていましたが、夫は職業を「無職」と偽っていました。
現在、金融機関だけでなく、ほとんどの民間の契約書には「暴力団及び反社会的勢力ではない」というチェック項目がありますから、これを偽れば、詐欺罪に問われることとなります。企業防衛の観点からは、この項目が入っていないと契約した後に暴力団員と判明しても解除できませんから、当然の措置と言えます。
ただ、今回の契約はリフォームローンですから必要な資金だったと思いますし、恐らくきちんと返済していたでしょう。しかも、夫はあくまでも保証人ですから、詐欺罪とするのは酷すぎると思われるかもしれません。このように暴力団を世の中の契約関係から排除しようという動きは、「普通の生活をしたいのなら暴力団をやめろ」という兵糧攻めとも言えます。
過激な主張も
それに対して「暴力団員には人権はないのか!」という意見もありますが、最近はその声も小さくなっていて、「暴力団は排除されて当たり前」というのが社会の風潮になっています。
こうした論理を突き詰めれば、いわゆる「人権問題」になります。「暴力団員が公共料金などの引き落としのための銀行の普通口座まで使えないのはおかしい!」という主張もあります。実際に裁判で争われたこともあり、この時は生活口座ではなかったので銀行が勝訴しましたが、「生活口座まで開設できない」ということになると普通の生活も送れなくなります。
生活口座は確かに民間の銀行が管理・運営するものですが、生活に必要な社会インフラです。極論すると、このまま暴排の風潮が強まれば、「暴力団だから水道、電気、ガスを止める」ということになるかもしれません。
実際、東京の暴排対策の弁護士の中には、「総ての領域で暴力団を排除せよ!」と過激な主張をする人もいます。例えば、「コンビニで暴力団にモノを売ってはいけない」、「タクシーも暴力団に対しては乗車拒否を可能とする」などです。
しかし、いくら何でもそれはやり過ぎでしょう。暴力団といえどもコンビニでモノは買うだろうし、タクシーに乗らなければならない事情もあるでしょう。
結局、日本の場合、暴力団対策法が暴力団をグレーゾーンとして認めておきながら一定の場合に規制するという中途半端なものであることから、様々な矛盾が生じています。暴対法の隙間をついて地下に潜ってさらに潜在化・不透明化しているという実態もあります。彼らをどうやってコントロールし、国民の安全・安心を守るのか?非常に難しい問題です。それでは次号で!