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「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」産経ニュースコラム7月5日(木)掲載されました。

2018/07/05

7月5日(木)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「激増する児童虐待 私たちは何ができるのか」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

【激増する児童虐待 私たちは何ができるのか】

 児童虐待事件が後を絶たない。

 つい先日も東京都目黒区で5歳の女児が両親の虐待によって死亡した。まともに食事を与えずに衰弱させ、ルールを守れないと激しく殴りつけるなどの暴行を加えたという痛ましい事件である。

 児童相談所への児童虐待の通告件数は増加の一途をたどり、平成27年度には10万件を超えた。これはあくまでも表に出た数字であるから、実際にはもっと多くの児童虐待が発生している。未来を担う子供たちの命が大人の手によって奪われることは何としても防がなくてはならない。

 児童虐待への対応には関係機関による「適切な情報共有と連携」が不可欠である。しかし、これが現実には機能していない。児童相談所と市区町村、また各児童相談所間の連携も不十分であり、自治体をまたいで児童が転居した場合の連携についても統一的な取り組みはなされていない。さらに、情報共有のために市区町村に「要保護児童対策地域協議会」が設置されているものの、これも実効性のある運用がなされていない。

 このように「適切な情報共有と連携」が進まない原因は、結局は「人と予算」が足りないことにある。児童相談所や行政の児童福祉担当部署などの現場では、激増する通告数に対して人も金も不足し、対応しきれていないのが現実である。また、児童福祉司のみならず、心理・医療の専門家や弁護士など専門性の高い人材の育成、配置も必要である。

 政府は速やかに情報共有や連携の実態を調査し、予算措置も含めた改善策を打ち出さなくてはならない。

 そして、何よりも「児童相談所は警察に対して児童虐待事案の『全件』について情報提供する」という統一ルールを作るべきである。実際、このような「全件」情報提供の取り組みをする自治体が増えている。

 これに対しては、「本来、児童相談所は育児に悩む親から相談を受ける機関であり、安易に警察を頼るべきではない」「児童相談所が全ての情報を警察に提供するとなれば警察の介入を嫌がる親からの相談がされにくくなり、かえって虐待の早期発見の妨げとなる」などの反対論がある。

 しかし、まずは児童を虐待から守る実効性ある対策をとることが最優先であろう。

 そして、私たちも児童相談所や警察任せではなく、私たちにできることをやらなくてはならない。

 児童虐待を引き起こす親の要因は「育児不安」「親自身の虐待された経験(トラウマ)」「病気」「貧困」などさまざまである。私も児童を虐待(傷害致死)した母親の国選弁護を担当した経験があるが、親自身が精神的に苦しんでいるケースも多い。虐待家庭のほとんどは地域で孤立し、行政機関を「敵」だと思い込んでいる。

 地域や身近にいる私たちが、ほんの少しでも「声をかける」「手を差し伸べる」ことによって追い詰められた親の救いとなり、虐待防止につながる可能性もある。私たち自身の意識と取り組みも問われているのである。

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