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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】児童虐待「全件」情報共有を急げ

2019/02/19

2月18日(月)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「児童虐待『全件』情報共有を急げ」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

児童虐待「全件」情報共有を急げ

またもや悲惨な児童虐待事件が繰り返された。

千葉県野田市の小学4年生、栗原心愛(みあ)さんが虐待によって死亡し、両親が逮捕された事件で、教育委員会、小学校、児童相談所に非難が殺到している。

心愛さんは小学校のアンケートで「お父さんにぼう力を受けています」「先生、どうにかできませんか」などと訴えていたにもかかわらず、あろうことか、教育委員会は父親を恐れてコピーを渡してしまった。さらに、児童相談所は心愛さんをいったんは保護しながらも、甘い判断で両親の元に帰してしまった。当事者意識に欠けた無責任ぶりにあきれるばかりである。大人が真摯(しんし)に対応していれば、明らかに救えた命である。

事件を受けて、政府は関係閣僚会議を開き、児童相談所などが把握している虐待が疑われる全てのケースについて、緊急の安全確認を行うことを決定した。

近年、児童虐待の通告件数は増加の一途であり、年間10万件を超えている。事件が起きるたびに、「児童相談所と関係機関の『適切な情報共有と連携』が必要だ」と叫ばれるが、抜本的解決には至っていない。

児童相談所だけでは人員も予算も不足している上、児童相談所が安易に事件を抱え込み過ぎているという実態もある。親が「虐待ではない」と言い張れば、対応を打ち切ってしまうケースも多い。

きめ細かな対応を行うためには、児童福祉司のみならず、心理・医療の専門家の協力が不可欠である。威圧的な親やモンスターぺアレンツに対しては、弁護士や警察OBなど専門性の高い人材を配置することも有益であろう。

そして、何よりも重要なことは、「児童相談所は警察に対して児童虐待事案の『全件』について情報提供する」という統一ルールを作ることである。全ての情報提供によって、危険な兆候を警察が把握すれば、ただちに家庭訪問を行うなど早期に虐待を摘発することが可能になる。

しかし、この警察との「全件」情報共有に対しては、反対意見も根強い。

日本弁護士連合会は、「児童相談所が育児に悩む親から任意の相談を受ける機能も担っていることに鑑(かんが)みれば、全てのケースにつき児童相談所と警察が情報を共有することとなれば、かえって警察の介入により逮捕等に至る事態となることを懸念する親からの相談がされにくくなり、その結果、虐待の発生防止・早期発見の妨げとなる可能性がある。したがって、安易に警察を頼るべきではなく、真に子どもの権利保護の観点から慎重な対応が必要である」などと反対意見を表明している。

しかし、これは、子供の命を守り切れていないという現実を直視していない。「虐待」という犯罪から子供を守る実効性ある対策をとることが最優先である。

最近では、このような警察との「全件」情報共有の取り組みを行う自治体が徐々に増えてきてはいるが、統一された法律がないため、各自治体任せになってしまっている。

子供を虐待から守るためには、一刻も早く、「全件」情報共有の法律を作り、全国統一ルールの確立を急がなくてはならない。

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