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【タックル法律講話】過払い金事件を巡る弁護士会と司法書士会の対立! 「依頼者の利益」という視点が蚊帳の外に置かれています。

2019/09/05

過払い金事件を巡る弁護士会と司法書士会の対立!
「依頼者の利益」という視点が蚊帳の外に置かれています。


「紹介料」か「業務委託料」か?

東京弁護士会が、「弁護士法人ベリーベスト法律事務所」の調査に乗り出しました。ベリーベストが、司法書士法人から過払い金事件の依頼者を紹介され、見返りに、1件につき19万8千円を支払っていたという疑惑です。
東京弁護士会側は、「この支払は、紹介の対価(紹介料)であり禁止されている」と主張し、ベリーベスト側は、「この支払は、司法書士法人が作成した過払い金計算書や裁判書類の対価として支払った業務委託料である」と反論し、対立しています。
弁護士法は、弁護士以外の者が報酬を得る目的で事業として事件を斡旋(あっせん)することや弁護士がこれらの者から事件の斡旋を受けることを禁止しています。また、弁護職務基本規程は、弁護士が依頼者の紹介について謝礼などの対価を支払うことを禁じているのです。
一般の感覚からすると、なぜ、弁護士だけが仕事を紹介してもらって、その紹介先に謝礼を支払うことが禁じられているのか、不思議に思われることでしょう。民間だったら、紹介料をやり取りするのは当たり前ですよね。
一方、司法書士が訴訟で代理人となることができるのは、訴額が140万円以下の簡易裁判所の訴訟に限られます。このため、過払い金が140万円を超える依頼者については、司法書士は代理人となることはできず、弁護士に事件を引き継ぐことになります。
東京弁護士会側は、「依頼内容は、本来、受任した弁護士が分析すべきで、司法書士が取得した情報を対価を支払って受け継ぐ性質のものではない」と指摘し、司法書士の作業への対価を清算する必要がある場合でも、司法書士と依頼者の間で清算すべきだとしています。

士業の「線引き」を再検討すべき!

しかし、そもそも、依頼者の立場になって考えると、最初に相談した司法書士に着手金を支払って計算してもらった結果、140万円を超えていたので、司法書士からは「扱えない」と言われます。そうなると、依頼者は、改めて弁護士に依頼しなくてはならないことになり、新たに着手金を支払わないといけなくなり、不利益を被ることになります。
依頼者からすれば、司法書士が作成した取引履歴や過払い計算書、裁判書類を弁護士が引き継いで手続きしてくれればいいだけのことであり、弁護士と司法書士の線引きによって自己の負担が重くなるのは納得がいかないでしょう。
そういう意味では、弁護士法や弁護士職務規程は依頼者にとっての経済的合理性がなく、時代の変化に合わせた見直しも考えるべきではないでしょうか?
また、反対に、そもそも、140万円以下の簡易裁判所の事件とはいえ、裁判を司法書士に扱わせていいのだろうか?という根本的な疑問も生じます。ただでさえ、司法改革で弁護士の数が急増しているのですから、わざわざ司法書士に裁判を扱わせなくても、弁護士で十分に対応できるのではないでしょうか?そろそろ、士業の「線引き」を検討する必要があると思います。それでは次号で!