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【タックル法律講話】「虚偽の供述させた」と逮捕された弁護士が、初公判で起訴内容を否認! 依頼人に嘘をつかれたら弁護士といえどもピンチです!

2019/10/04

「虚偽の供述させた」と逮捕された弁護士が、初公判で起訴内容を否認!
依頼人に嘘をつかれたら弁護士といえどもピンチです!


依頼人「性善説」

昨年10月、第二東京弁護士会所属の江口大和弁護士が、無免許運転で死亡事故を起こした男(A)に対し、その車の所有者である会社社長(B)に捜査が及ばないように、虚偽の供述をさせたとして、犯人隠避教唆の罪で逮捕されました。その初公判が先日行われ、江口弁護士は「私は犯人隠避教唆も共謀もしていない」と起訴内容を否認し、無罪を主張しました。
事故は平成28年5月に発生。横浜市で、無免許の男(A)が運転する車が電柱に衝突し、同乗の男性が死亡しました。江口弁護士は、その車の所有者で、男(A)が勤めていた会社の社長(B)の刑事責任(車両提供罪)を免れさせるために、男(A)に対し、警察官に嘘を言うように依頼したとされています。
江口弁護士の逮捕のきっかけは、事故を起した男(A)が、自分の公判で、「社長(B)から車の提供を受けた」と喋ったことに始まります。その結果、車を提供した社長(B)は、「車両提供罪」で逮捕され、さらに、社長(B)から車の提供を受けたことを警察の取調べ段階で隠していたとして、男(A)も犯人隠避の罪で再び逮捕されたのです。そして、江口弁護士は、男(A)の犯人隠避行為を教唆した罪で逮捕されました。
検察側は、江口弁護士が「運転していた男(A)が勝手に乗用車を持ち出したのであり、社長(B)は何も知らなかった」という虚偽の書類を作成し、その内容の通りに警察に話すように男(A)に依頼した、と指摘。
一方で、江口弁護士側は、社長(B)と別の同乗者が共謀して「男(A)が勝手に乗用車を持ち出した、社長(B)は何も知らなかった」という嘘の話を作り、そのまま江口弁護士に説明したため、「説明が虚偽だとは知らなかった」と主張しています。

難しい依頼人との信頼関係

そもそも弁護士には「依頼人性善説」的なところがありますので、基本的には、依頼人の言うことを信じながら業務を遂行します。「嘘を見抜けなかったのは、弁護士のミスだ」と批判されるかもしれませんが、弁護士といえども万能ではありません。依頼人が最初から弁護士を騙すつもりで周到に準備されると、弁護士であっても、その嘘を見抜くのは困難です。
通常、弁護士は、相談に来た人には、最初に、「言いにくいことや、自分に都合の悪いことであっても、隠さずに、ありのままに話してください」と確認するようにしています。 有利なことも不利なことも含めて、嘘のない状態の中で、よりよい解決法を依頼人と一緒に考えるのが弁護士の仕事です。弁護士と依頼人の信頼関係がなければ弁護活動はできないのです。
弁護士が、依頼人から「先生、何とかなりませんか」と頼られ、「こういう方法もあります。しかし、これは法律に抵触しますからお勧めしません」とアドバイスしたとします。しかし、依頼人がそれを本当に実行してしまって、「弁護士に言われました」と証言されてしまうと、その影響は弁護士にも及びますから、弁護士は下手なことは言えません。
この事件の真相はわかりませんが、私の感覚からすると、江口弁護士が、弁護士生命が絶たれるような危ない橋を渡ってまで、意図的に犯人隠避の教唆をやるだろうか?という疑問は残ります。江口弁護士はテレビのコメンテーターを務めるなど名前も売れていたそうですから、仮に無罪になっても、既に大々的に報道されてしまっている以上、今後の弁護士活動にも大きな支障があります。なので、江口弁護士が主張する通り、「説明が虚偽だとは知らなかった」可能性はあります。裁判の行方が注目されます。それでは次号で!