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【タックル法律講話】不動産業者が私道を封鎖し住民に通行料を要求! 「所有権絶対の法則」か?「権利の濫用」か? 今後、日本人の「和」だけでは解決できないケースも増えてきますから、法の整備が必要です

2019/11/05

不動産業者が私道を封鎖し住民に通行料を要求!
「所有権絶対の法則」か?「権利の濫用」か?
今後、日本人の「和」だけでは解決できないケースも増えてきますから、法の整備が必要です


ハードル高い「権利の制約」

長崎市の団地内を通る私道を取得した不動産業者が、道路の一部を封鎖して住民に通行料を請求するというトラブルが発生しています。
私道はJR長崎駅から約4キロの住宅街にあり、総延長は約700メートル。現在、一部がバリケードで封鎖され、100世帯以上の住民の通行に影響が出ています。困った住民らは、先日、不動産業者に対して、通行を妨害しないように求める仮処分を長崎地裁に申し立てました。
住民側の弁護士によると、昨年11月に私道の所有者が福岡県の不動産業者に変更され、業者は今年6月頃から1世帯当たり月最大1万円程度の通行料を住民に請求し、車両の侵入や住民の通行を禁止する看板を設置しているそうです。
都市計画法では昭和46年度以降に開発が許可された団地内の道路は原則として「市道」となりますが、この団地はそれ以前に許可されたため、「適用外」ということになるのです。
理屈から言いますと、「私道はあくまでも不動産業者の所有だから、住民は、通りたいのなら通行料を払うか、買い取りをすべきだ」ということになります。「所有権」というのは非常に強い権利で、憲法にも「所有権絶対の法則」があります。
ただし、一方で、「権利濫用の禁止」という法理もあります。憲法は「国民は権利を濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と規定し、民法も「権利の濫用は、これを許さない」と規定しています。
「今まで長年にわたって住民が普通に通っていた道を通行させないのは、権利の濫用にあたる」と裁判官が判断すれば、不動産業者の所有権を制限する決定がなされる可能性もあります。裁判の行方が注目されます。


失われる「和」の精神

この騒動を見ていると、これからは、今まで日本人が大切にしてきた「隣り近所のお付き合い」とか「和」などの価値観が通用しなくなるのでは?という気がしてきます。
長崎市が私道を買い取れば解決するかもしれませんが、今後、こうしたケースが起きる可能性は否定できませんから、市としても悪しき前例になる恐れがあり、安易に買い取りはできません。
日本人らしいメンタリティを持たない、権利意識ばかりが強い人間が増えれば、今回のようなトラブルが多発するでしょう。
また、昨今、盛んに「ダイバーシティ(多様性)」が叫ばれていますが、日本に外国人が増えれば、これまでのような日本式の「なあなあ」では済まされなくなります。
住民、国民にとって重要な不動産に対する適正な管理がなされないと、今回のようなトラブルが増え、由々しき事態になる危険性があります。速やかな法整備の必要性を感じます。それでは次号で!