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【タックル法律講話】東名あおり二審で「手続が違法。審理差し戻し」?! 明らかに一審の裁判長の訴訟指揮のミスです。 ムダな裁判に付き合わされた遺族と裁判員が気の毒です。

2020/01/06

東名あおり二審で「手続が違法。審理差し戻し」?!
明らかに一審の裁判長の訴訟指揮のミスです。
ムダな裁判に付き合わされた遺族と裁判員が気の毒です。


「判断は間違いないが、手続がおかしい」?

神奈川県大井町の東名高速道路で平成29年6月、あおり運転により停車させられた夫婦が後続の大型トラックに追突され死亡した事故で、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)などの罪に問われた無職・石橋和歩(かずほ)被告。
一審横浜地裁の裁判員裁判では危険運転致死傷罪の成立を認めて懲役18年の判決が言い渡されましたが、これを不服とした石橋被告が控訴していました。
先日、その控訴審判決で東京高裁は、「危険運転致死傷罪の成立を認めた一審の判断に誤りはないが、訴訟手続に違法(ミス)があった」として、一審判決を破棄し、地裁に差し戻し(審理のやり直し)を命じました。
理由は、「一審の裁判では、裁判前の整理手続きで裁判所が検察と弁護側の双方に『危険運転致死傷罪にはあたらない』という見解を表明したにもかかわらず、その後の裁判員裁判でその解釈を変更して危険運転致死傷罪にあたるとした。被告人と弁護側にきちんとした反論の機会を与えておらず、違法な手続だったから、もう一度、審理をやり直しなさい」というものです。
恐らく、ほとんどの方は、「?」と首を傾げると思います。
被告人や弁護側からすれば、一審の裁判長が「危険運転致死傷罪にはあたらない」と言うので必要な主張・立証をしなかったところ、いざ裁判員裁判に臨んだら、危険運転致死傷罪の判決が出たのですから、「不意打ちだ!」と言いたくなるのも当然です。
高裁は、「危険運転致死傷罪が成立する見通しで反論していれば、因果関係や量刑に影響した可能性がある」として、改めて裁判員裁判で審理をやり直すべきだと判断したのです。これは、明らかに一審の裁判長の訴訟指揮のミスであり、実に馬鹿馬鹿しい前代未聞の話です。


時間と税金の無駄

裁判員は裁判前の手続で整理され、公判に出てきた材料でしか判断できませんから、「それまでの手続自体が間違っていた」と言われても、どうしようもありません。
裁判員としては、危険運転致死傷罪と業務上過失致死傷罪の2つで起訴されていたことから、「これはひどい事件だ!」という思いで、より刑が重い危険運転致死傷罪の成立を認めたのでしょう。
一生懸命に議論して出した判決が全く無駄になってしまったのですから、貴重な時間を割いて臨んだ裁判員もいい面の皮です。
高裁としては、「刑事訴訟手続における被告人の権利保護は最大限尊重されるべきであるから、裁判員裁判だからといって軽んじてはいけない」ということで釘を刺したつもりなのでしょうが、一般国民からすれば、「裁判所はもっとしっかりしろ!」と思うでしょう。
事件が起きてすでに2年以上経過してるのに、差し戻しされてもう一度、初めから審理するわけですから、さらに時間も税金もかかります。何よりも遺族の方々はやり切れない気持ちでしょう。裁判所はきちんとミスを認めて謝罪すべき案件だと思います。皆さんはどう思われますか?それでは次号で!