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【タックル法律講話】コロナを理由に裁判所が次々と裁判を延期! もっと工夫して、「国民の法的権利の実現」 という使命を果たしてもらわないといけません。

2020/06/01

コロナを理由に裁判所が次々と裁判を延期!
もっと工夫して、「国民の法的権利の実現」
という使命を果たしてもらわないといけません。


裁判所は「3密」ではない

新型コロナウイルスは、裁判の世界にも影響を及ぼしています。
特措法の緊急事態宣言によって、対象となった都道府県の裁判所は、予定していた大半の裁判期日を取り消し、延期としてしまいました。再開時期は未定です。
民事裁判は、ただでさえ時間がかかると不評ですが、さらに遅れることになります。通常の民事裁判は、裁判官と原告と被告の3者で書面のやり取りや進行確認をするだけですから、5分もかからずに終わります。電話会議という方法もあります。大勢の傍聴人が詰めかける事件などほとんどありませんから、「3密」とは程遠い安全な状況です。裁判所が体制を整えてやろうと思えば、いくらでもやれます。
刑事裁判は、さらに深刻です。例えば、身柄が拘束されていても執行猶予判決が予想される場合は、判決が出ればすぐに身柄を解放されますが、ある裁判所では、4月中の判決言渡し日を延期してしまいました。残念ながら、執行猶予を得られるはずだった被告人にとっては、まだまだ身柄の拘束が続くことになってしまいました。
判決はすでに作成済みのものを言い渡すだけであり、傍聴席に大人数が詰めかけるわけでもありません。刑事裁判の期日延期は、憲法が定める「被告人が迅速な裁判を受ける権利」を損なう恐れがあり、安易になされるべきではありません。
 
裁判所の使命は重い

また、ある裁判所では、4月中に刑事裁判の第1回公判期日が予定されていましたが、担当裁判官が「非常事態宣言や新型コロナ感染拡大の状況に鑑みて、不特定多数が集まる公開法廷で裁判を開くのは適当でない」として、職権で期日を延期してしまいました。
これに対して、被告人と弁護人が猛反発。「裁判の公開は憲法上の要請であり刑事裁判の本質であるから、感染拡大を理由に延期することは本末転倒である。被告人の身柄拘束が続く一方で、公開だからという理由で裁判を進めないということはあってはならない」と異議を申し立てました。
これに対して、担当裁判官は、「緊急事態宣言が1年も解除されないようであれば、その時に考える」という木を鼻でくくった回答しかしませんでした。およそ国民感覚からずれた回答であり、被告人や弁護人が憤慨するのも無理はありません。
確かにコロナは大変ですが、裁判所は、司法権を担い、国民の権利の実現に直結する極めて重要な組織です。市役所や県庁などの他の役所は、感染予防の工夫をしながらも稼働しているのですから、裁判所もやろうと思えばやれるはずです。
公務員はコロナを理由に稼働しなくても給与は減らないし困らないでしょうが、裁判所を頼って民事裁判や調停を起こしたり、刑事裁判で判決を待つ人たちにとっては、お金や人生がかかった大切な時間なのです。
裁判所の使命は「国民の法的権利の実現」(司法サービス)なのですから、しっかりと使命を果たしてもらわないと困ります。それでは、次号で!