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情報誌「財界九州」7・8月合併号「暴力団・反社会的勢力の最近の特徴と対策について」
2020/08/20
情報誌「財界九州」7・8月合併号【Lawyer eyes】のコーナーに,堀内恭彦弁護士のコラムが掲載されました。
ご一読いただけますと幸甚です。
「暴力団・反社会的勢力の最近の特徴と対策について」
弁護士 堀内恭彦
【民事介入暴力とは何か?】
私は弁護士登録以来、長年、民事介入暴力(民暴)対策に携わっています。民暴(ミンボー)とは「暴力団・反社会的勢力が市民の民事紛争に介入し不当な利益の獲得を図る行為」であり、要するにユスリ・タカリです。
民暴は平穏な市民生活・企業活動を妨害し法律や人権を無視する悪質な行為です。
私たち民暴弁護士は、警察・暴追センターと連携して、法的に被害者の防御・救済を図る活動を行っています。組長に対する損害賠償請求訴訟、組事務所の撤去訴訟などもその一つです。
【民暴の本質】
民暴の本質は「感情の対立」ではなく「冷静な経済原理」です。弱くて経済的メリットの大きいところからは徹底して取り尽くし、強くて経済的メリットのないところからは素早く撤退するという行動パターンが繰り返されます。
「弱きを助け、強気を挫く」任侠の心はありません。彼らもビジネスですから割に合わないことはしませんし、何よりも警察(刑事処罰)を恐れています。
【最近の特徴】
平成4年施行の暴力団対策法によって露骨な不当要求は減少しましたが、「暴力団フロント企業」を巧みに活用するなど、その手口は知能化・巧妙化しています。
また、「反警察」が進み、警察との関係遮断、徹底した情報統制が先鋭化し、実態がつかみにくくなっています。
彼らの伝統的な手口は企業恐喝・乗っ取り、下請け強要、高利貸しなどですが、最近は、震災などの災害復興事業に絡むものが増えています。
また、企業から簡単にお金が取れなくなったため、伝統的な資金獲得犯罪(覚せい剤、売春、美人局、賭博など)への回帰が見られます。
【企業の対処法】
企業の対処法としては、何よりも「初めが肝心」です。「見極めよ。会わない、入らせない、金を出さない」。
こちらが強くて経済的メリットがないことを早い段階で相手にわからせる必要があります。そして、早期に警察、暴追センター、弁護士へ相談すべきです。
反社情報の収集については、多角的な情報源を持ち、民間のデータベースも活用して、各支店・部署と連携して行う必要があります。
また、契約書に「暴力団排除条項」を盛り込むことは必須です。この条項がないと、単に「相手が反社である」というだけでは契約の解除はできません。
反社の認定にあたっても、訴訟に耐え得る客観的な「証拠」を揃えておく必要があります。
【おわりに】
先日、民暴対策でもお世話になってきた福岡県暴追センター専務理事の藪正孝さんが「県警vs暴力団~刑事が見たヤクザの真実」(文春新書)を上梓されました。現場での実践に基づく示唆に富む書であり、ご一読をお勧めします。
暴力団・反社との関係遮断は企業の社会的使命であり、重要課題です。今後もしっかりと取り組んでいきたいものです。
【プロフィール】
1965年生れ、修猷館高校、九州大学法学部卒。専門は企業法務。九州弁護士会連合会民事介入暴力対策委員会委員長などを歴任し、暴力団・反社会的勢力対策に精通している。九州ラグビーフットボール協会理事