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【タックル法律講話】新型コロナウイルス感染拡大で、続々と裁判が延期! 被告人の「迅速に裁判を受ける権利」が侵害されています。

2020/09/08

新型コロナウイルス感染拡大で、続々と裁判が延期!
被告人の「迅速に裁判を受ける権利」が侵害されています。


「真実の発見」と「適正手続の保障」

新型コロナウイルスの影響は裁判所にも及んでいます。
先日、東京地裁の裁判員裁判のうち、当初3月に始まる予定だった殺人未遂事件の公判が11月に開かれる方向で調整が進んでいることが判明しました。全国で多くの裁判員裁判が延期となりましたが、8ヵ月の先延ばしは極めて異例です。
最高裁は2月、「至急でない裁判の期日を柔軟に変更するように」との通達を全国の裁判所に出しました。感染が拡大した3月以降、裁判員裁判は軒並み取り消され、裁判官だけで審理する裁判が件数を絞って開かれています。
裁判員法には裁判員裁判の対象から除外する規定がありますが、「裁判員らに危害が加えられる恐れがある場合」などに限られており、「感染拡大」は理由にならず、延期とせざるを得ないのです。
しかし、これでは、被告人はいつまでも裁判を受けられず、たまったものではありません。刑事裁判は一体誰のためにやっているのか?もう一度考える必要があります。
当然のことながら、刑事裁判は、裁判員のためにやっているのではなく、「真実の発見」と「適正手続の保障(被告人の権利保障)」のために行われるものです。
保障されるべき被告人の権利には「迅速に裁判を受ける権利」も含まれます。コロナによる裁判の延期で、被告人はいつまでも裁判を受けられず身柄を拘束されたうえに不安定な状態に置かれてしまいます。
つまり、「裁判員がコロナに感染する恐れがあるから」という理由で裁判を延期することは、全く本末転倒なのです。

裁判所の怠慢

「刑事事件で逮捕されて起訴されたんだから、延期ぐらい我慢しろ!」というお上の感覚があるのかもしれません。しかし、判決が出るまでは、あくまでも「推定無罪の原則」ですから、どう考えても被告人の権利を侵害しています。
また、「真実の発見」についても、裁判が延期になって時間が経てば経つほど、被告人や証人の記憶も薄れてしまい、真実から遠ざかる懸念があります。
本来、「感染拡大」が裁判員の除外規定にあたらないのであれば、裁判所は、感染対策を万全にして粛々と裁判員裁判を進めなければなりません。これをやらないのは裁判所の怠慢以外の何物でもありません。
最高裁からの「柔軟に変更するように」という通達だけで、憲法上保障されている被告人の権利を軽視し、真実の発見からも遠ざかるような事態を招くことは、早急に改めてもらわないといけません。
裁判所には猛省を求めるとともに、これを機会に、刑事裁判のあり方と裁判員制度を見直すべきだと思います。それでは次号で!