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【タックル法律講話】ウーバーイーツの配達員による事故が多発! 配達員は、労働者か?個人事業主か? 「使用者」としてのウーバー社の責任が問われています。

2020/12/01

ウーバーイーツの配達員による事故が多発!
配達員は、労働者か?個人事業主か?
「使用者」としてのウーバー社の責任が問われています。


ウーバー社と配達員の関係は?

ウーバーイーツの配達員による事故が多発していますね。
先日、料理などのデリバリーサービス「ウーバーイーツ」(Uber Eats)の配達員が運転する自転車に追突され怪我をした大阪市の60代の女性が、「配達員だけでなく、配達員を指揮監督している運営会社にも責任がある」として、配達員と運営会社であるウーバージャパンに対し、250万円の損害賠償を求める訴えを起こしました。
女性は、おととし6月、大阪市内の歩道でウーバーイーツの20代の男性配達員が運転する自転車に追突され、首などに怪我を負いました。
配達員は、配達先の検索のためスマートフォンを見ながら運転しており、罰金刑を受けました。
ウーバーイーツは、サンフランシスコに拠点を置くウーバー・テクノロジーが展開しているオンラインフードデリバリーサービスで、2016年には、日本でもサービスが開始されました。今年のコロナウイルス感染拡大で宅配の需要が急増し、コロナで仕事が無くなった人たちの登録が増えて、彼らの貴重な収入源となっています。
ウーバーイーツのシステムにおいては、配達員は、労働者ではなく、あくまでも個人事業主です。ウーバー社に雇用されている訳ではありません。また、ウーバー社は、飲食店と配達員をマッチングするシステムを提供しているだけに過ぎません。
そうなると、法律的な指揮監督関係はありませんから、通常の使用者責任という訳にはいきません。
そこで、今回の訴訟では、「配達員はウーバー社の指示に従って業務に就いているのだから、『事実上の指揮監督関係』がある」と主張して、ウーバー社の使用者責任を追及しようとしています。


「指揮監督」があるか?がポイント

通常の雇用契約であれば、配達員が事故を起こせば、その雇い主(使用者)に責任を追及できます。労働基準法・労働契約法はかなり厳しく、経営者にとっては雇用の足かせになっています。
以前、ナイトクラブのホステスが「労働者」か否かで争われた裁判がありました。
クラブ側は、「ホステスを雇用しているのではなく、ホステスがお客と会う場所を提供しているだけで、ホステスは個人事業主だ!」と主張しました。しかし、裁判所は、「実態はクラブの指揮監督に従っているので、労働者である」と認定し、クラブ側が敗訴しました。
今回のウーバーイーツの事件でも、実際に「指揮監督」に従っていたか否か?がポイントとなります。
ただ、事故の全てをウーバー社の責任にするのは、いかがなものかと思います。
ウーバー社が敗訴すれば、全国で同様の訴訟が起こされることになり、ウーバー社のビジネスモデルは成り立たなくなります。
そうなると、ウーバーイーツの配達で生計を立てている人たちは収入の道が断たれることになります。また、飲食店も自粛ムードが続く中、宅配という形で何とか経営を維持しています。そういう意味では、ウーバー社のビジネスモデルは、このコロナ不況を乗り切るための有効な社会的ツールとも言えます。
先ほどのクラブとホステスの裁判とは異なり、飲食店と配達員の間をウーバー社が開発したシステムでマッチングするという形態ですから、「指揮監督」があると言い切るには微妙な事案ですね。裁判の行方が注目されます。それでは次号で!