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【タックル法律講話】検察官が法定刑を超える求刑ミス! 裁判官も誤認し、そのまま判決! 最も責任が重いのは判決を出した裁判官では?

2021/03/01

検察官が法定刑を超える求刑ミス!
裁判官も誤認し、そのまま判決!
最も責任が重いのは判決を出した裁判官では?


前代未聞のミス

先日、東京地方検察庁が、わいせつ電磁的記録有償頒布目的所持罪に問われた被告人2名に対し、誤って法定刑を超える求刑をしてしまい、裁判所も法定刑を超える判決を言い渡してしまった、と発表しました。
地検は間違った判決を是正するために、同日控訴しました。
同罪の懲役刑は「懲役2年」が最高なのですが、検察官は「懲役2年6月」を求刑。裁判官も「懲役2年6月、執行猶予4年」などの判決を言い渡してしまったのです。
地検は「基本的な確認を怠ったもので深く反省し、今後、より一層の点検確認を行い再発防止に努めたい」としています。
しかし、法廷で求刑を述べた検察官、判決を言い渡した裁判官、これを聞いていた弁護人や書記官の誰もがミスに気づいていなかったわけで、相当深刻な話です。マスコミ報道では求刑ミスをした検察官が悪いようになっていますが、一番責任が重いのは、間違いなく判決を出した裁判官です。
「求刑」は、あくまでも検察官の意見表明であって、裁判官はその意見に拘束されません。検察官が求刑しても、それ以下やそれを上回る判決が出たりします。
しかし、法定刑を超える判決が出ることはあり得ません。前代未聞のミスと言えます。

裁判所は「聖域」ではない

裁判官も人間ですから、間違いやミスはあります。
大切なのは、ミスを公表し、国民の批判をきちんと受けることです。ミスをした裁判官の氏名も公表すべきだと思います。もし、この裁判官が将来最高裁判事になるようなことがあれば、こうした経歴が公表されずに任命され、国民審査の際も国民の判断材料がないことになるからです。
また、この問題は、裁判所と検察庁の馴れ合いの関係にも原因があると思います。
もともと、日本の全ての裁判官を統制している最高裁判所事務総局と法務省・検察庁は、設立当初から、つかず離れずの関係を維持しています。以前から、「判検交流(はんけんこうりゅう)」と言って、一定期間、裁判官が検察官になったり、検察官が裁判官になったりする人事交流も行われています。
これに対しては、「裁判の公正を損なう」「裁判官と検察官が密接になりすぎて馴れ合いが生じる」などの批判があります。
このような裁判官と検察官の緊張感のなさが、本件のような軽微な事件でのあり得ないミスにつながったと思います。検察官の求刑を裁判官が鵜呑みにしていちいちチェックしなかったのでしょう。こうしたことが起きると、国民の司法に対する信頼は揺らぎます。
マスコミも、日頃はちょっとしたことでも批判するにもかかわらず、こと裁判所の不祥事となると、途端に及び腰になります。裁判所が「聖域」として扱われている感じがしますね。
政治や行政のゆるみ・怠慢が多発している昨今ですが、残念ながら、人の運命を左右する司法もゆるんでいるようです。人間ですから間違いやミスがあるのは当然ですが、裁判所を聖域化せず、国民の目に見える形で正していくことが求められるのではないでしょうか。それでは次号で!