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【タックル法律講話】山梨県の女児行方不明事件、SNSでの誹謗中傷! 母親が投稿者を特定するために提訴! 無法状態のSNSへの抑止力になるといいですが・・・

2021/06/03

山梨県の女児行方不明事件、SNSでの誹謗中傷!
母親が投稿者を特定するために提訴!
無法状態のSNSへの抑止力になるといいですが・・・


悪質な書き込みが・・・

山梨県のキャンプ場で令和元年9月に行方不明になった当時小学1年の小倉美咲さんの母親が、ツイッター上で誹謗中傷を受けたとして、ツイッター社に10件超の投稿者情報の開示を求める訴訟を起こしました。
訴状によると、ツイッターで9つのアカウントから、「私も母親が犯人と思う」「(母親の)逮捕も首を長くして待つことにします」などと、母親を犯人視する誹謗中傷の投稿が計14件あり、中には母親の投稿に直接返信する形で、美咲さんに関するひわいな内容の投稿を繰り返したものもあったといいます。
原告側は「幼い美咲に対する凌辱的な言葉をわざわざ母親に向けて発信する行為を到底許容することができない」とし、不明中の美咲さんに対する「敬愛追慕の情」や、母親の名誉権などが侵害されたと主張しています。
この母親への誹謗中傷をめぐっては、「殺すぞ」などとメッセージを送った静岡県の男が昨年に脅迫罪で有罪判決を受けた他、同県の男が名誉毀損罪で起訴され公判中です。
先日ニュースになった「紀州のドンファン事件」で逮捕された元妻についても、SNS上で犯人扱いする膨大な書き込みがありますが、これも元妻側から提訴される可能性は十分にあり得ます。なぜなら、あくまでも逮捕されただけであり、犯人と確定したわけではないからです。警察が逮捕し、検察が起訴し、それから審理が始まって判決が出るまでかなり長い時間を要します。それまではあくまでも「推定無罪」であり、犯人扱いすることは、元妻からすれば、誹謗中傷・名誉毀損以外の何ものでもありません。
まして、今回の山梨県の行方不明事件では母親は被害者なのですから、それを犯人扱いしたり、誹謗中傷したりするのは言語道断です。


ハンドマイクを使って叫び回るのと同じこと

このような疑惑事件の誹謗中傷に対する訴訟の原型は、40年ほど前に起きた「ロス疑惑」に見られます。被害者の夫である三浦和義氏(故人)は、自分を犯人扱いしたマスコミに対し、名誉毀損を理由に次々と裁判を起こしました。三浦氏は、弁護士を立てずに全て自分で裁判を行い、その数は実に500件近くにも上り、8割は勝訴したと言われています。
当時は、インターネットはなく、SNSでの書き込みではありませんでしたが、逆に、今はマスコミでなく一般人でも情報発信や書き込みができますので、誰でも訴えられる可能性があります。今回の山梨県の行方不明事件での母親への誹謗中傷も根拠のないものですから、訴えられたらほとんど敗訴するでしょう。
残念ながら、SNS上では無責任で卑劣な誹謗中傷が溢れています。しかし、これは、現実には、街中でハンドマイクを使って誹謗中傷を大声で叫んで回っているのと同じことなのです。興味本位、ストレス発散で安易な書き込みをすると、民事、刑事で訴えられる大きな代償を払うことになります。
そういう意味では、こうした訴訟は一罰百戒で、無法地帯と化しているSNSに対する抑制力になります。自分の書き込みには責任を持つべきという意識が広まれば、いいのですが・・・。それでは次号で!