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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】外国人による土地取得問題 さらなる法整備を

2021/07/06

7月5日(月)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「外国人による土地取得問題 さらなる法整備を」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

外国人による土地取得問題 さらなる法整備を

去る6月16日、通常国会の会期末ギリギリで、ようやく安全保障上重要な施設の周辺などの土地利用を規制する法律(土地利用規制法)が成立した。

外国資本による日本の土地の買い占め問題はもはや待ったなしの状況である。北海道では中国資本によって別荘やリゾート地のみならず、森林・水源地、さらには自衛隊基地や飛行場周辺の広大な土地が爆買いされている。国境離島の長崎県・対馬でも韓国資本による土地の買い占めが止まらない。安全保障上、由々しき事態である。

日本以外の多くの国では、外国人の土地所有を禁じるか、厳しく制限している。また、土地所有自体を認めずに、「50年」などの期限を区切った借地権としている国も多い。これに対して、日本では外国人が土地を所有・利用することについて何の制限もない。あまりにも無防備である。

ようやく成立したこの土地利用規制法は、自衛隊基地や原子力発電所などの重要インフラ施設周辺約1キロと国境離島などを「注視区域」とし、土地所有者の国籍や氏名、利用状況などを調査できるとした。また、特に重要性が高い区域を「特別注視区域」と定め、不動産売買の際には事前に国籍や氏名を届け出ることを義務づけた。重要施設などの機能を阻害するような利用行為があれば勧告・命令がなされ、違反した場合は2年以下の懲役などが科される。

この法律に対しては、与党の一部や野党、弁護士会などから「財産権、プライバシー権などの人権を侵害する」「曖昧な要件の下で刑罰を科しており、罪刑法定主義に反する」などの反対論が相次いだ。しかし、国家安全保障の観点から人権が一定の制限を受けることは当然であり、また、運用方針を具体的に定めることによって恣意(しい)的な刑罰適用は避けることができる。

このように何とか成立にこぎつけた法律であるが、安全保障の観点からはまだまだ不十分であると言わざるを得ない。この法律は「外国人は日本の土地を買うことができない」というものではなく、あくまでも、その利用行為に限って制限を加えたものに過ぎない。

ネックになるのが、日本が1994(平成6)年に加盟したGATS(サービス貿易に関する一般協定)における「日本人と外国人の待遇に格差を設けてはならない」(内国民待遇の保障)という国際ルールの存在である。それでも、加盟時に土地取得に関する「留保」を行っておけば外国人の土地所有を禁じることもできたのだが、お粗末なことに、日本は世界からの投資を呼び込みたいがために、この「留保」を行っていなかったのである。

しかしながら、外国人の土地取得は国家の存立にかかわる問題である。日本は不動産取引については国際的に開かれ過ぎた自由市場であり、常に外国人による買い占めの危険にさらされている。今回の法律制定で安堵(あんど)することなく、国際ルールの壁を乗り越えるために、GATS加盟国への働きかけを強め、協議を進めていかなくてはならない。

法整備の遅れを喜ぶのは土地を買い漁(あさ)る外国勢力である。政府、国会にはより迅速かつ実効的な対応を期待したい。

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