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【タックル法律講話】「アイドル」の熱愛発覚で訴訟に発展?! 「恋愛禁止」の是非が問われていいます。

2021/11/02

「アイドル」の熱愛発覚で訴訟に発展?!
「恋愛禁止」の是非が問われていいます。


裁判所の判断は正反対?

先日、人気アイドルグループ「乃木坂46」メンバーの星野みなみさんと男性とのデートが週刊誌にスクープされ、星野さんは自身のブログで一部の活動自粛を発表しましたね。熱愛が発覚したアイドルが活動休止やグループの解散、ひいては引退に追い込まれるケースは後を絶ちません。芸能事務所は様々な策を講じて事態の収拾を図りますが、アイドルと対立して訴訟に発展した例もあり、司法判断も分かれています。
一つは平成27年の裁判で、芸能事務所が所属していた女性アイドルに対して交際発覚による損害賠償を求めたものです。事務所は女性との間で異性との交際や密会を禁じる契約を結んでおり、「交際発覚でグループが解散に追い込まれた」と主張。女性側は「交際しないことがアイドルにとって不可欠の要素ではない」と反論していました。判決は「ファンの支持を得るため交際禁止の条項が必要だった」と認定し、会社がグループのデビューのために負担した衣装代やレッスン代など数百万円のうち65万円の支払いを女性に命じました。
これとは反対に、もう一つの平成28年の裁判では、裁判所は「恋愛は幸福を追求する自由に基づくものであり、恋愛禁止の契約は女性の自己決定権を著しく制約する」として、芸能事務所の請求を棄却しました。
このように、司法判断も正反対に別れているのです。

アイドルビジネスは「疑似恋愛」

私見としては、一つ目(平成27年)の司法判断が妥当だと思います。
そもそも、マネジメント契約は「民間と民間」の契約ですから、双方に「契約自由の原則」があります。女性は契約する際に恋愛禁止条項があることを理解し納得したうえで契約しているのです。もし、それが嫌であれば契約しなければよかっただけの話です。どうしてもアイドルになりたければ、恋愛を禁止していない他の事務所と契約すればよいのです。
また、「アイドル」という芸能ビジネスにおいては、「疑似恋愛」が基本ですから、ファンのアイドルに対する幻想を破ってしまえばビジネス自体が成り立ちません。事務所としてはデビューまでに多くのコストをかけ、何年かかけてようやく稼げるアイドルに育てていくのですから、契約で一定の歯止めをかけてハードルを高く設定しておく必要があります。
芸能事務所側が強制したり騙したりして契約をさせたのであれば問題ですが、アイドル自身が納得して契約したのであれば、その約束を破って熱愛発覚に至った場合、何らかのペナルティを受けることは致し方ないと思います。
「アイドル」とは「偶像」という意味であり、「あこがれの的」「熱狂的なファンをもつ人」を指す言葉です。「いつまでも夢を見させてほしい」というファンの願望と「リアルな恋愛」という現実のギャップを埋めるのはなかなか難しそうですね。それでは次号で!