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【タックル法律講話】死刑囚が国を提訴! 死刑執行を当日にいきなり告知するのは「非人道的」? むしろ曖昧な運用にメスを入れるべきです。
2021/12/03
死刑囚が国を提訴!
死刑執行を当日にいきなり告知するのは「非人道的」?
むしろ曖昧な運用にメスを入れるべきです。
死刑確定から執行までが長過ぎる
「死刑執行を死刑囚に当日にいきなり告知する運用は憲法に違反し非人道的だ」として、死刑囚2人が4日、国に精神的苦痛への慰謝料計約2200万円の支払いなどを求め、大阪地裁に提訴しました。
死刑の執行については、法律で「法務大臣による命令から5日以内の実施」が定められていますが、告知の時期に関する規定はありません。現在は死刑囚本人に死刑執行の1~2時間前に伝える「即日告知・即日執行」の手法で運用されています。
原告側はこうした運用について、「法律による適正な手続を経た刑罰」を定めた憲法の規定に違反していると指摘。「刑事訴訟法は死刑の執行停止や不服申立ての権利を保障しているが、現在の運用では死刑囚が弁護人に連絡する時間すらない」「行政の運用によって、不服申立ての機会を奪われていることが問題だ」として、「死刑執行への受忍義務はあるが、『即日告知・即日執行』という違法な死刑執行を受忍しなければならない義務はない」などと主張しています。
一般人の感覚からすると、何とも理解しがたい主張ではないでしょうか。
死刑が確定すればいつ執行されても合法です。むしろ、法務大臣がいつまでも命令書にサインしないことが許されているという実態に問題があると思います。本来、死刑執行は法律の規定通り「6か月以内」に執行すべきなのですが、実際には、死刑確定から執行まで平均で5年かかっており、あまりにも長過ぎます。中には10年以上もかかったケースもあります。法律で決まっていることをずるずると引き延ばすのは、行政の怠慢ではないでしょうか。
被害者や遺族の人権は?
また、「再審請求」が死刑執行の引き延ばしのために利用されているという指摘もあります。確かに再審請求が出されその審理が進んでいる間は冤罪の可能性がゼロではありませんから、歴代の法務大臣の中には世論の反発を恐れて死刑執行を躊躇するケースもありました。法務大臣の中には、「在任中、全く死刑執行をしなかった人」や「自分は死刑廃止論者だから死刑執行はしないと公言した人」がいましたが、これは職務怠慢も甚だしいのであって、即刻、法務大臣を辞任すべきだと思います。
最近は、死刑執行をめぐる法務省の方針にも変化が出てきていて、上川陽子法務大臣のもとで行われた2回の死刑執行は、いずれも再審中の死刑囚でした。
今回の訴訟提起は、死刑囚の精神的苦痛もさることながら、「死刑廃止」運動の一環として世論喚起を図ろうという側面もあると思われます。死刑反対論は構いませんが、そうであれば、死刑を廃止する法律を国会で成立させるのが筋です。
むしろ、死刑執行に至る運用が曖昧になってしまっており、死刑反対派があれこれと引き延ばし策を講じることができる状況が問題なのではないでしょうか。加害者の人権だけではなく、被害者や遺族の人権にも思いを致さなくてはならないと思います。それでは次号で!