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【タックル法律講話】家庭裁判所が調停に「ウェブ会議システム」を導入 。メリットは当事者の負担軽減。 デメリットは情報漏洩?
2022/02/02
家庭裁判所が調停に「ウェブ会議システム」を導入。
メリットは当事者の負担軽減。
デメリットは情報漏洩?
メリットとデメリット
離婚や相続などの家庭内の法律問題を取り扱う家庭裁判所において、調停(話し合い)をオンラインで行う「ウェブ会議システム」の導入が始まりました。大阪、名古屋、福岡の3つの家庭裁判所では、今年1月中旬以降に機材の準備が整ったところから実施されており、東京でも来年1月に導入予定です。
このウェブ会議システムには、当事者の負担軽減や安全確保といったメリットがあります。東京家裁は「ひとり親や遠方に住んでいる申立人が、わざわざ裁判所に出頭する負担が軽減されるなどのメリットがある。IT化を見据えた合理的な調停の在り方を模索したい」と話しています。また、安全面では、遺産分割や離婚のような家事事件では、感情的な対立が激しいこともあり、当事者が顔を合わせることはできるだけ避ける必要があります。東京家裁で離婚調停中だった米国籍の夫が、日本人の妻を刃物で殺害する事件も発生しました。当事者の安全確保を図れるというメリットがあります。
令和2年度の司法統計によると、全国の家庭裁判所で行われた家事調停は約13万4000件でした。相当な数であり、ウェブ会議システム導入のメリットは大きいと思います。
離婚問題は「調停前置主義」といって、訴訟の前に調停を行うことが義務付けられています。話し合いの余地がなくても、まずは家裁に調停の申し立てを行い、遠方の家裁にも出頭しなくてはなりませんでしたが、ウェブ会議システムの導入によってかなり負担が軽減されます。
一方で、なりすましや録音・録画による情報漏洩の危険といったデメリットもあります。ウェブ会議に参加した人が本当に本人かどうかをどのように確認するのか?ウェブ会議に必要な機器や通信回線を確保できない経済状況にある人はどうするのか?画面周辺の見えない位置に当事者以外の者がいて、ウェブ会議でのやりとりを聞いている、当事者が録音・録画してSNSなどにアップする、などの事態も予想されます。
「離婚」のあり方
このようにウェブ会議システムには、メリット・デメリット両面ありますが、時代の流れとしては、ウェブ会議システムは増えていくと思われます。
そもそも、根本的には、法律上、離婚自体が認められにくい構造になっていることも問題だと思います。「婚姻」が双方の合意で始まるのであれば、一方が婚姻を継続する意思がないのであれば、緩やかに離婚を認めていく、とすべきではないでしょうか。
離婚するために感情的なやり取りを延々と続けていては、互いに疲れるばかりで、非生産的な時間を浪費するだけです。いたずらに長期化・泥沼化させるよりも互いに早く離婚して再出発する方が生産的だと思います。
「夫婦喧嘩は犬も食わない」と言いますが、本来、「法は家庭に入らず」という諺もあるように、離婚は夫婦二人で解決すべき問題であり、何でもかんでも家裁に持ち込もうとする風潮にも首をかしげてしまいます。
今回のウェブ会議システムの導入をきっかけとして、これからの離婚調停や裁判のあり方を考えるべきではないでしょうか。それでは次号で!