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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】「教員の性暴力」へ新法施行 さらなる対策強化を

2022/05/03

5月3日(火)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「『教員の性暴力』へ新法施行 さらなる対策強化を」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

「教員の性暴力」へ新法施行 さらなる対策強化を

4月から「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」が施行された。教員による児童生徒への「性暴力・性犯罪」が後を絶たず、処分歴を隠して別の自治体で採用され、わいせつ行為を繰り返す悪質な事案もあり、早急な対策が求められていた。

新法では、児童生徒へのわいせつ行為や性的羞恥心を害する言動を「児童生徒性暴力」と定義して、これを禁止。性暴力を理由として教員免許を失効した者が免許を再取得するには、各都道府県が設置する「再授与審査会」の審査を経なければならない。審査では更生したことを示す医師の診断書や証明書の提出が要求されるため、現実には再取得は極めて困難となった。また、性暴力による教員免許失効者のデータベースを整備することも定められた。

これまでは性暴力を理由に懲戒免職となっても3年後には免許を再取得して教壇に立つことができたので、児童生徒を性暴力の危険にさらさないためには新法で一歩前進したと評価できる。

しかし、まだまだ課題は多い。

何よりも、予防の観点からは、児童生徒に性暴力を行う可能性が高い者を教壇に立たせるべきではない。こうした者をあらかじめ教員として採用しないための実効性ある採用過程の検討が急務である。特に、小児性愛については疾病として診断基準が確立されていないので、国として小児性愛の研究と知見を深める支援が必要である。

学校や教育委員会は性暴力事案をきちんと調査し、厳正な処分をしなくてはならない。性暴力は本来であれば懲戒免職だが、実際には停職などの軽い処分にとどめている場合も多い。事実の矮小(わいしょう)化や事なかれ主義では児童生徒の安全を守ることはできない。特に障害などにより自ら被害を訴えることが困難な児童生徒については慎重に調査すべきである。特別支援学校など児童生徒の数が少なく、他の教員の目が行き届にくい環境については、被害を未然に防止する措置が必須である。

また、教員のみならず、広く児童生徒と接する職種についても同様の仕組みが必要である。ベビーシッター、保育士、塾講師、放課後児童クラブの職員、部活動の外部コーチ、教員以外の学校職員など、性暴力を行った者が二度と児童生徒と接する職種に就くことができないよう、採用する側が公的機関に照会して性犯罪の前科などの有無を確認できる制度を導入すべきである。

さらに、私立学校の教員については、性暴力事案の発覚後、処分の決定がなされる前に依願退職してしまえば教員免許が失効しないので、新法では対応できない。私立学校の教員への対応策についてはさらなる法整備が求められる。

教員らによる児童生徒に対する性暴力は、児童生徒の権利を著しく侵害し、生涯にわたって回復し難い心身への影響を与える。教員から言葉巧みに口止めされた被害児童が、何年もたってから心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症して苦しんでいる例もある。卑劣な行為であり、決して許されるものではない。性暴力を行った教員が教壇に戻ってくるという事態はあってはならない。新法の適切な運用と今後の対策強化に期待したい。

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