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【タックル法律講話】保釈中の被告人の逃亡防止にGPSを装着?
国外に逃げられてしまえば打つ手はありませんが 国内であれば抑止効果が望めそうです
2022/05/09
保釈中の被告人の逃亡防止にGPSを装着?
国外に逃げられてしまえば打つ手はありませんが
国内であれば抑止効果が望めそうです
ゴーン被告の逃亡を受けて
保釈中の被告人の海外逃亡を防ぐため、法務省と最高裁が今年度から、被告人に装着させるGPS(衛星利用測位システム)を利用した端末の開発に着手します。開発業者を選定して実証実験を行い、早ければ令和8年度中の運用開始を目指しています。
保釈中の逃亡防止をめぐる議論は、3年前に起きた日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の海外逃亡事件を受けて本格化しました。その前の逃亡事件としては1997年、戦後最大規模の経済犯罪「イトマン事件」の主犯である許永中の逃亡が記憶に新しいですね。許は妻の実家の法要を理由に裁判所に旅行許可を得て、そのまま韓国内に逃亡、保釈を取り消されて、当時史上最高額の6億円の保釈金が没収されました。ちなみに最高額はゴーン被告の総額15億円です。
許氏は捕まりましたが、ゴーン被告は完全に逃げ切りましたから、逃げ得です。これからはなりふり構わぬ海外逃亡も増えるでしょうから、逃げ得を許さないためにもGPS装置は必要です。
法制審議会は、裁判所が国外逃亡を防止する必要性があると判断した場合、保釈許可時に装着を命令できる制度創設を目指しています。保釈後に空港や港などの「所在禁止区域」を定め、無許可で入ったりGPS端末を外したりすれば拘束され、1年以下の懲役が科されることとしています。
抑止効果は?
法務省によると、保釈が許可される割合は、2009年の15.6%から2020年の31.9%にほぼ倍増し、近年、増加傾向にあります。
しかし、これとは反対に、「保釈中の逃走」などを理由とした保釈の取り消しは、40人から219人に増加。懲役など確定したにもかかわらず、所在不明になった「とん刑者」は昨年6月末時点で41人に上ります。神奈川県や大阪府で保釈後の逃亡事件が相次ぎ、安易な保釈の問題点が浮き彫りとなっていました。
現行法の「逃亡罪」は、刑務所などで身柄を拘束されている受刑者らが脱走したケースを対象としていますが、保釈中の被告人が逃亡した場合の制裁手段は、保釈保証金の没収と保釈取り消しだけですから、許氏やゴーン被告のように巨額な保証金を諦めて海外に逃げてしまえば逃亡は可能なのです。
GPS端末は手首や足首への装着が想定され、取り外しにくく位置情報を適切に送信できるとされています。しかし、GPSを付けていても、空港や港などの「所在禁止区域」以外の場所から海外に逃亡し、犯罪人引渡条項を結んでいない国に逃げ込んでしまえば、もはやお手上げです。
したがって、GPS端末は単純な国内逃亡であれば抑止効果はあると思います。ただ、課題はGPSの性能、つまり、絶対に取り外せないことと位置情報の正確性ですね。それでは次号で!