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【タックル法律講話】アマゾンは欠陥商品を売っても責任なし?
「流通の直接的な環」であるネット通販事業者の責任は重いはずです

2022/06/01

アマゾンは欠陥商品を売っても責任なし?
「流通の直接的な環」であるネット通販事業者の
責任は重いはずです


中国製バッテリーから出火!

ネット通販大手「アマゾン」で購入した中国製バッテリーから出火し自宅が火事になった男性が、消費者保護を怠ったとしてアマゾンに対し30万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。
男性がアマゾンのサイトを通じて購入した中国製バッテリーが約1年5カ月後に自宅で発火。家族は全員避難し無事でしたが、リビングや家財道具は大きく焼損し、損害額は1,000万円超に上りました。
男性はアマゾンの「問い合わせフォーム」を通じて中国メーカーに損害の賠償を求めましたが、中国メーカーが対応しなかったため、アマゾンに交渉の仲介などを依頼しましたが、これも拒否されました。男性は、中国国内での訴訟も検討しましたが、訴訟費用だけで数百万円ほどかかることが分かり、断念しました。
その後、中国メーカーからは和解金として184万円が支払われましたが、一連の対応でアマゾンに不信感を持った男性は、アマゾンジャパンに30万円の損害賠償を求めて提訴。「アマゾンには利用契約に基づき出店者や商品を審査する義務や、消費者が不測の損害を受けた際の補償制度を構築する義務があった」と主張しました。
しかし、今年4月の地裁判決は「原告はアマゾンの問い合わせフォームを利用してメーカーと連絡を取り、和解を成立させることができた」と指摘。アマゾンによる商品の審査については「義務とまではいえない」として、請求を棄却しました。
納得のいかない男性は、現在、控訴しています。

流通業者にも責任を

このようなアマゾンで購入した欠陥商品をめぐる訴訟は、米国では消費者側が勝訴する判決が相次いでいます。日本では製造業者のみが責任を負うのに対し、米国では製造者を含めた流通業者も責任を負うとされ、アマゾンのようなインターネット上で商取引の場を提供する「デジタルプラットフォーム(DPF)事業者」も、販売を仲介する「流通の直接的な環」と評価されるようになっているのです。
対面販売の場合は商品の内容をしっかりと検査して販売しているでしょうが、アマゾンなどのDPF事業者はノーチェックに近いでしょう。今回のように製造者が中国企業の場合、現実的にその責任を問うことは難しいわけですから、消費者は泣き寝入りするしかありません。それでも納得して買ったから自己責任ではないか、という反論もあるでしょうが、誰も欠陥商品を買いたくて買うはずはありません。今のネット販売のあり方は、欠陥商品でも流通に乗せてしまうので、製造者はそうした商品を流通に乗せてしまえば乗せたもの勝ち、野放しになっているのが現状です。
流通業者の責任が問われるようになれば、商品の審査・検品もしっかりやるでしょうから、製造者も欠陥商品を出品しないようになります。やはり、利益だけ取ってリスクを負わないという「ずるいビジネス」は認めないというアメリカの司法判断は、参考になりますね。
日本の場合、製造者の責任は問いますが、流通業者の責任は問うていません。しかし、これからはますますネット上の商取引が盛んになっていくでしょうから、「利益あるところに責任あり」の大原則を踏まえた法整備が必要でしょう。それでは次号で!