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【タックル法律講話】法廷で居眠りしていびきかいた裁判員を解任!
制度疲労した裁判員制度は見直す時期に来ています!

2022/08/02

法廷で居眠りしていびきかいた裁判員を解任!
制度疲労した裁判員制度は見直す時期に来ています!


法廷にいびきが響く・・・

仙台地方裁判所で放火殺人の疑いで起訴されている被告人の裁判員裁判において、男性裁判員が法廷でいびきをかきながら居眠りをしていたとして、弁護人が裁判所に裁判員の解任を請求しました。
公判で弁護人が弁論を読み上げている最中に、男性裁判員が裁判員席で数分間居眠りをし、いびきの音が響き一時弁論を遮るほどの状態となったため、直後に裁判長が休廷を宣言し、再開後は通常通り公判が続けられました。
弁護人は、解任申立書で「裁判員の態度は誠実さを著しく欠き、裁判の公正さへの信頼を損なうおそれがある」「無罪を主張している被告人にとって到底受け入れられない」と主張していました。
裁判員法は、被告人側が裁判員の解任を請求できる事由として、「裁判員が不公平な裁判をするおそれがあるとき」、「暴言その他の不穏当な言動をすることによって公判手続の進行を妨げたとき」などを定めており、今回はこれに沿って解任請求をしたものと思われます。
結局、後日、解任請求された男性裁判員が自ら辞任を申し出たため、仙台地裁は裁判所の判断で解任を決定しました。


緊張感のない法廷

いびきで解任請求されたのは、今回が初めてでしょうね。
通常の解任請求は、例えば、裁判員と被告人が何らかの利害関係がある場合などで、過去に被告人と接点があって恨みを持っている裁判員だったら、「公正な裁判」は期待できません。
被告人側としては、「居眠り」、「いびき」というのも「公正な裁判」が期待できない不誠実な態度である、という解釈での解任請求だったのでしょう。
しかし、睡魔は誰でも襲われます。緊張感があっても睡魔には勝てないこともあります。特に弁論は長くなりやすいので、ついウトウトすることもあるでしょう。弁論中の少しの時間に居眠りをしたからといって判決に影響が出るとも思えません。
一方で、解任を請求する被告人の気持ちもよく分かります。自分の一生を左右する裁判でいびきをかかれては腹も立つでしょう。裁判員はプロの裁判官ではありませんが、判決に関わるのですから裁判官と同じです。被告人にとっては、もし、自分の裁判で判決を書く裁判官が裁判中に居眠りしていびきをかいたら、堪ったものではありません。
結局、一般市民に過ぎない裁判員に「裁判官のようなプロ意識を持て」といっても無理な話なのです。2009年に鳴り物入りで始まった裁判員制度も、早や10年以上が経過しました。最近では、裁判員制度自体が話題に上ることも少なくなり、明らかに、緊張感のない、緩んだ法廷になってしまっています。今回のケースが前例となれば、今後、被告人側からの解任請求が頻発する可能性もあります。
文字通り、制度疲労に陥っている裁判員制度は、見直す時期に来ているのではないでしょうか。それでは次号で!