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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】跋扈する「半グレ」 総合的対策で治安回復を

2023/02/15

2月14日(火)、産経ニュースにコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「跋扈する『半グレ』 総合的対策で治安回復を」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

跋扈する「半グレ」 総合的対策で治安回復を

「ルフィ」と名乗る指示役が関与したとされる一連の広域強盗事件で次々と容疑者が逮捕されている。SNSの「闇バイト」で集められた「半グレ」による犯行とみられている。

半グレとは暴力団に所属せずに常習的に犯罪を行う集団である。「グレ」は「ぐれている」「愚連隊(ぐれんたい)」「グレーゾーン」などを意味する。暴力団が組長を頂点としたピラミッド型組織であるのに対し、半グレは指揮命令系統が不明確で犯罪ごとに離合集散を繰り返す流動型組織であり、その実態は不透明だ。

警察庁は半グレの中でも「暴走族の元構成員などを中心とする暴力的不法行為等を繰り返している反社会的集団で人的・資金的に暴力団等と密接な関係を持つもの」について、「準暴力団」と位置付けている。

近年、暴力団対策法(暴対法)の規制を逃れる形で半グレなどの反社会的勢力が台頭。特殊詐欺やSNSを駆使した犯罪活動を活発化させ、暴力団に匹敵する資金源を築きつつあり、治安上の脅威となっている。全国の半グレは約60団体、構成員は約4千人で山口組の構成員数に匹敵する。

警察庁は半グレなどの実態を把握するために特命班を発足させ、福岡県警も今年1月から半グレなどの捜査を専門に行う「準暴力団等集中取締本部」を新設した。

暴力団と同様に半グレを法律的に定義して規制の網をかけることができればいいが、これが難しい。平成4年に施行された暴対法は「指定暴力団」を「犯罪経歴を保有する暴力団員が一定割合を占め、首領の統制の下に階層的に構成された団体」と定義しているが、メンバーが流動的な半グレは定義すること自体が容易ではない。いかに定義付けして新しい規制法の網をかけるのかが鍵となる。

半グレ対策に効果があるのは何よりも「逮捕・検挙」である。しかし現状は警察も半グレの情報を得ることが難しく、首謀者の検挙に結び付いていない。

不透明な存在である半グレの情報を得るためには諸外国のマフィア対策を参考にして新たな捜査手法を導入すべきである。組織のことを話せば刑を軽くする「司法取引・刑事免責」、身分を隠して組織に潜入する「おとり捜査」、通信機器での会話やメッセージをキャッチする「通信傍受要件の緩和」などである。

さらに、半グレの資金源を断つことも重要である。海外の一部ではマフィアの金はマフィア側が「違法な収益ではないこと」を立証しない限り、没収や課税が可能とされている。日本でもこのような没収・課税制度を作ることによって資金源を断つことが可能になる。

他方で、暴力団からの離脱・復帰支援と同じく、半グレを生み出さない、再び手を染めさせない社会的支援や施策も必要である。一口に半グレと言っても元暴力団員から素人同然の若者までさまざまだ。特に「闇バイト」で安易に犯罪に手を染めるのは10代、20代の若者が多い。

半グレ問題に詳しい犯罪社会学者の廣末登氏は「コロナ渦で困窮した若者の苦境を見るにつけ、排除するだけでは解決にならない」「闇バイトに巻き込まれた若者を一回限りでアウトにすることは犯罪社会の人口を増やし、新たな被害者を生み続ける可能性がある」と指摘する。半グレ対策を考える上で重要な視点である。

これからの半グレ対策には新たな法整備・情報収集・検挙・資金源の根絶、そして離脱・復帰支援、と官民が連携した総合的な取り組みが求められる。



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