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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】改正DV防止法が成立
「精神的暴力」も対象に ―今後の課題は?―

2023/05/30

5月30日(火)、産経新聞にコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「改正DV防止法が成立 「精神的暴力」も対象に ―今後の課題は?―」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」、いわゆるドメスティックバイオレンス(DV)防止法が今月12日に改正され、来年4月から施行される。

現行法では「身体的暴力」と「生命・身体に対する脅迫」(身体的DV)に限って被害者への接近などを禁止する「保護命令」を出せることになっているが、改正法では暴言や態度で相手を攻撃する「精神的暴力」(精神的DV)にも対象を拡大した。

また「接近禁止命令」の期間を現行の「6か月」から「1年」に延長して被害者保護を図るとともに、命令に違反した場合の罰則を「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」へと引き上げて厳罰化した。

近年、暴力は振るわなくとも「長時間にわたって暴言を浴びせる」「行動を監視して支配下に置く」などの「精神的DV」が増えている。内閣府によるとDV相談の約6割は「精神的DV」が占めている。その背景としてコロナ禍の外出自粛によって夫婦ともに在宅時間が長くなったことが指摘されている。

今回の改正は平成13年のDV法成立から20年以上が経過し多様化するDVの実態に対応するための改正であり、一歩前進したといえよう。

しかし、課題は多い。

DVの相談件数は増えているが、被害者がDV法を活用して裁判所に保護命令申立を行う件数は年々減り続けている。申立から発令までに平均12日間かかってしまう現在の手続では、切羽詰まった被害者にとっては利用しづらいことが原因であろう。

今回の改正で「精神的DV」まで対象が広がったことは評価できるが、身体的DVとは異なり、「精神的DV」は外傷などの客観的な痕跡が残らないため、被害者の証言だけでDV認定できるのかという課題が残る。

そもそも接近禁止命令は被害者が逃げることを前提とする制度となっている。そのため、被害者は仕事を続けることも難しく、生活への影響も大きい。被害者が逃げることなく安全を確保できる仕組みを作る必要がある。加えて、一刻を争う深刻な事案に対応するためには、保護命令の発令までの間、被害者を緊急的に保護する制度を創設すべきである。

DVは児童虐待を伴うことが多いため、児童相談所と支援センターの連携も急務である。

加害者の更生にも力を入れたい。加害者の脱暴力への更生指導やプログラムの受講を義務化することも検討すべきである。

DVは家庭内の問題にとどまらず、社会的な課題でもある。私たち自身が加害者、被害者、傍観者にならないことが大切であり、今後は「第三者がDVを見過ごさない」という教育、啓発をより充実させていかなくてならない。

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