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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】「市民」に外国籍も含む? 「自治基本条例」の危うさ
2023/08/02
8月1日(火)、産経新聞にコラム「熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断」
「『市民』に外国籍も含む? 『自治基本条例』の危うさ」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。
7月25日、熊本市は自治基本条例の「市民」の定義に「外国の国籍を有する者も含む」とした改正案について、多くの反対意見が寄せられたことから、この記述を削除する方針を明らかにした。
昨年12月に改正案を公表した大西一史市長は「今後増加が見込まれる外国籍の住民が参加しやすい環境を整えるために、『市民』の定義に外国人も含むことを明文化する」と説明していた。
しかし、その後の意見公募で、1476人(市内457人、市外1019人)のうち大半が「外国人に参政権を与えることにつながる」「移民を認めることになってしまう」などと反対。市は「誤解や不安を招きかねない」として「外国籍」の文言を削除した新たな改正案を9月の定例市議会に提出するよう軌道修正を図った。
外国人問題を真剣に考える国民の声が何とか明文化を食い止めた格好だ。もっとも、市側は「現行の条例においても『市民』には市内に居住する外国人住民も当然に含まれている」「『外国人』を明記しないことが『市民』から外国人を排除するものとは考えない」などと述べている。要は「外国籍者も含む」とわざわざ条例に書かなくても、市側は「市民」には外国人も含むと解釈している、ということだ。
そもそも「市民」の定義とは? 市の自治基本条例で「住民」は「市内に住所を有する者」、「市民」は①住民②市内に通勤し、又は通学する者③市の事業者、地域団体、市民活動団体等のいずれかに該当するもの-と定義されている。そのうえで「市民は、日本国憲法及び法令に定める権利を有するとともに、①市長等及び市議会に対して情報を求める権利②市政・まちづくりに参画し、意見を表明し、又は提案する権利を有する」と定められている。改正案は、この「市民」の定義に「外国籍者も含む」と明記しようとしていたのである。
そうすると外国人も「市民」としてこれらの権利を有していることとなり、「市政への参画として市議会議員への立候補・選挙権を認めよ」という主張の根拠となってしまう。「外国人に参政権を与えることにつながる」という反対意見もあながち誤解とは言い切れまい。
さらに市政の重要課題の是非を問う住民投票については事案ごとに「○○の住民投票に関する条例」を制定するが、投票権者の資格、投票方法などはあらかじめ明記されておらず、その都度、定めることとなっている。「住民」「市民」の定義に外国人が含まれるとなると、必然的に「外国人にも住民投票権を与えよ」という要求につながっていくこととなろう。
自治基本条例(まちづくり基本条例とも呼ばれる)は「自治(まちづくり)の方針と基本的なルールを定める条例」であり、「自治体の憲法」とも言われている。もともと国家よりも個人やグループの存在と権利を重視する思想から生み出されたものであり、特定のイデオロギーによる似たような条例が多いとの指摘もある。
熊本市に限らず、自治基本条例の最大の問題点は「市民」の定義が曖昧かつ範囲が広すぎることにある。「日本国民」や「住民」は憲法や地方自治法などで明確に定義されているが、「市民」には法的な定義がなく、自治体ごとにバラバラだ。ここに、地方自治に特定の外国勢力やイデオロギー集団が入り込み、市政に介入してくる隙間が生じる。
「市民」とは近代西洋の「CITIZEN」の翻訳語でもあり、「政治参加の主体となる者」という意味がある。「市民」の定義の中に外国人を含ませることの問題点を認識し、地方から日本がなし崩しにされないよう、自治基本条例に対する自治体の長や地方議員の言動を注視していかなくてはならない。
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