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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】ラグビーW杯 「JAPAN WAY」と「多様性」

2023/09/19

9月19日(火)、産経新聞にコラム「ラグビーW杯 「JAPAN WAY」と「多様性」」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

9月8日、ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会が開幕した。10月28日の決勝戦まで51日間の熱い戦いが繰り広げられる。2019年の日本大会では日本代表は初のベスト8に進出し、日本全体が熱狂した。代表のスローガン「ONE TEAM」(ワンチーム)はこの年の流行語大賞にも選ばれた。

日本ラグビー界に革命を起こしたのは前監督のエディ・ジョーンズ氏である。エディ氏はW杯で過去わずか1勝しかしていない日本代表を2015年大会で3勝させるという偉業を成し遂げた。優勝候補の南アフリカを撃破した試合は「ブライトンの奇跡」と呼ばれ、世界を驚かせた。

しかし、2012年にエディ氏が日本代表監督に就任した当時、選手たちのマインドセット(心構え)は「W杯では今まで1勝しかしていない」「日本人は体が小さいから無理」などと世界と戦うには程遠いものであった。

エディ氏は日本国内の大学や社会人チームの指導歴があり、夫人も日本人。日本のことをよく理解していた。日本人の力はこんなものではない、日本のラグビーは自分たちの中に眠る本来の力を知らないまま、弱い現状に甘んじてしまっている。世界と同じことをしていても勝つことはできない。しかし、「日本人らしさ」という強みを生かせばチャンスはある、と考えていた。

エディ氏は「JAPAN WAY」(ジャパン ウェイ)という戦略を掲げた。「日本人らしさ」を武器とし、日本独自の方法や優位性を表現したものである。「日本人らしさ」とは「並外れた勤勉さ、強い責任感、きめ細かな技術、頭の良さ」である。

「並外れた勤勉さ」で過酷な練習に耐えて努力を続ける姿勢は他国の選手にない強みである。これを今までの「耐える、頑張る」の根性論から、目的と合理性を持った「正しい勤勉さ」へと進化させていった。

「強い責任感」は個人だけではなく、「チームのために!」と全員が共有することを求めた。弱点に見える「体格の小ささ」も「個性」と捉え、「大きな選手よりも素早く動ける」「低い姿勢を取りやすい」という長所を引き出した。そこに「きめ細かな技術、頭の良さ」を加えた緻密な戦術を作り上げた。

エディ氏は、こうした「日本人らしさ」をベースに「世界一の練習量」と言われたハードワークを選手に課し、劇的な変化をもたらしたのである。

一方で、ラグビーの特徴に「多様性」(ダイバーシティ)が挙げられる。ラグビーには、その国の国籍を持っていなくても一定の条件を満たしていれば代表選手になれるというルールがある。日本代表にも外国籍の選手は多い。外国人選手であっても日本人と同様、「日の丸を背負って日本のためにプレーする」という気持ちに変わりはない。

「多様性」を認め、他者や他国を尊重するには、まず何よりも自己のアイデンティティー、自分らしさが確立されていなければならない。それが「JAPAN WAY」である。「多様性」の中に「JAPAN WAY」という軸が定まることによって大きな力が生み出される。

エディ氏の取り組みは、ジェイミー・ジョセフ監督率いる現在の日本代表にも脈々と受け継がれている。「JAPAN WAY」と「多様性」が融合した素晴らしい戦いを期待したい。


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