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【タックル法律講話】旧統一教会に解散命令請求!
「不当寄付勧誘防止法」の抑止力には期待できますが、
現実に活用できるかはハードルが高そうです。

2023/11/02

旧統一教会に解散命令請求!
「不当寄付勧誘防止法」の抑止力には期待できますが、
現実に活用できるかはハードルが高そうです。



評価できる新法

先日、文化庁が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の解散命令請求を東京地裁に申し立てましたね。今後の裁判が注目されます。
また、今年1月には悪質な寄付勧誘や高額寄付を規制する「不当寄付勧誘防止法」が施行されました。この法律は、親が信者であることから生活困窮に陥った宗教二世たちの被害の「未然防止」と「救済」を目的とするものであり、違反した宗教法人らへ行政措置を命じたり、罰則を科したりすることができるようになりました。
同法では、寄付の勧誘に際して、相手の「自由な意思を抑圧しない」「生活の維持を困難にさせない」「法人名を明らかにし、寄付の使途を誤解させない」という3つの「配慮義務」を規定し、さらに、「家にとどまって勧誘を続ける」「その場から帰らせないで勧誘を続ける」、「退去困難な場所へ同行」「威迫による相談妨害」「恋愛感情に乗じて関係破綻を告知」「霊感を用いた勧誘」など6つの「禁止行為」も規定し、これらによる寄付や契約は取り消しできることになりました。
この配慮義務や禁止行為に違反した場合、消費者庁は宗教法人に対して必要な対応をとるよう勧告や命令を発出することができ、命令に従わなかった場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金を科されます。
ただ、勧告などの発出は「著しい支障が生じていると明らかに認めることができる場合」と限定されているため、元信者らが裁判所に訴訟を提起して自由な意思を抑圧されたことなどを客観的に示す証拠を提出する必要がありますので、実際に勧告が発出されるまでには数年かかることが予想され、実効性を疑問視する声もあります。
しかし、この配慮義務や禁止行為は、旧統一教会の勧誘の手口を網羅していますから、抑止力になるのは間違いありません。旧統一教会も今まで通りの勧誘行為を行うことは難しくなるでしょう。今まではこうした悪質な行為を規制する法律がありませんでしたから、法律ができたこと自体は評価できると思います。


「信仰の自由」という厚い壁

また、この法律は、宗教二世などの救済策として、民法の「債権者代位権」の考え方を採用しました。例えば、信者である親が宗教法人へ多額の寄付をし、勧誘に問題があって寄付が取り消せるのに取り消そうとしない場合、親の扶養下にある未成年者らが代わりに宗教法人へ取り消しを求めることができます。特例として将来分の生活費なども一括請求できるようにしました。
ただ、これは法律的なテクニックとしては評価できますが、実際に使うとなると敷居が高いとも言われています。例えば、信仰をやめず寄付を取り消す意思がない親を飛び越して、未成年者自身が親に代わる法定代理人を立てて争わなければなりません。同居している家族同士が対立するのですから、現実的には難しいでしょう。未成年の法定代理人には親戚がなることが考えられますが、これも人間関係など考えればハードルが高いと思います。また、成人している子は債権者代位権を行使できません。
結局、信仰の自由が保障されている中、親が自分の財産を自分が信じる宗教に寄付することまで、国が介入してストップさせることには限界があります。現実には、親本人の洗脳が解けて悪質宗教から脱しないと、宗教二世の救済は難しいと思います。
ただ、これまでにはなかった法律ですから、ある程度の抑止力には期待できますし、運用を改善しながら実効性あるものにしていくことが大切でしょう。それでは次号で!