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【熱血弁護士 堀内恭彦の一筆両断】裁判官の弾劾裁判が異例の長期化
私的な表現と罷免の是非は?

2023/11/28

11月28日(火)、産経新聞にコラム「裁判官の弾劾裁判が異例の長期化 私的な表現と罷免の是非は?」が掲載されました。
ご一読いただけると幸甚です。

裁判官の弾劾裁判が異例の長期化 私的な表現と罷免の是非は?

ツイッターなどの交流サイト(SNS)への投稿などで不適切な表現をした裁判官を罷免することができるのか? 事態は長期化の様相を呈している。

仙台高裁の岡口基一判事(57)=職務停止中=は令和3年6月、国会の裁判官訴追委員会から訴追され、2年以上経過した現在も裁判官弾劾裁判所(裁判長・船田元衆院議員)での審理が続いている。訴追の理由は、岡口裁判官のSNSへの投稿や発言などの職務に関係ない私的な表現行為が「裁判官としての威信を著しく失うべき非行があったとき」(裁判官弾劾法)に該当する、というものである。

岡口裁判官が平成29年に東京都の女子高生殺害事件に関して「遺族には申し訳ないがこれでは単に因縁つけているだけですよ」との文章を掲載したことや、平成30年に犬の所有権をめぐる民事裁判で飼い主を冷やかすようなツイートをしたことなどが問題視されている。岡口裁判官は裁判の技術を分かりやすく伝えた法曹界のベストセラー「要件事実マニュアル」の著者であり、また、司法を身近に感じてもらうためにSNSを活用するなど、積極的な情報発信を行う裁判官として知られている。

憲法上、司法権の独立を図るために裁判官の身分は厚く保障され、「公の弾劾によらなければ、裁判官は心身の故障で執務できない場合を除き、罷免されない」とされている。公の弾劾については、「国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議員の議員で組織する弾劾裁判所を設ける」「裁判官の罷免の訴追は、各議院においてその議員の中から選挙された同数の訴追委員で組織する訴追委員会がこれを行う」と定められている。

訴追委員会への訴追請求は日本国民であれば誰でもすることができ、訴追委員会が「弾劾事由あり」と判断すれば、弾劾裁判所へ訴追され、裁判が開始される。裁くのは衆参各院から7人ずつ選ばれた計14人の国会議員であり、弾劾裁判制度は司法への民主的コントロールの究極の手段とも言われている。

一連の岡口裁判官の表現行為が遺族ら関係者への配慮を欠いた不適切なものであることは否定できない。ただ、このことと罷免までできるかについては、より慎重な考察が必要である。

「裁判官としての威信を著しく失うべき非行」については、「裁判官としての地位を剥奪することが正当化されるほどの重大かつ明白な非違行為」に限定されるべきである、との解釈もある。実際、過去に裁判官が罷免された事案は7件のみであり、いずれも、収賄、職権乱用、児童買春、ストーカー行為、盗撮など、重大かつ明白な非違行為であった。

また、弾劾裁判は一審制であり再審理がないため、より厳格かつ慎重な審理がなされなければならない。罷免されると法曹資格自体を失い、検察官・弁護士にもなれないという重大な不利益が生じる。

今回の弾劾裁判は、司法の独立・裁判官の身分保障・表現の自由などさまざまな重要な要素を含んでいる。「私的なツイートでクビになるなら、裁判官は権力者の顔色ばかりうかがうようになってしまう」「裁判所が裁判官による情報発発信やSNS利用を抑制しようとしている」との意見がある一方で、「表現の自由をはき違えている」「こんな人が裁判官でいいのか」との批判もある。

近年のSNSを巡る問題については拡散しやすく深刻な被害につながることから、厳しく対応していこうとの流れがあることも事実である。

弾劾裁判の今後の行方が注目される。


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