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【タックル法律講話】夏休みの宿題「自由研究」の所有権は誰にある?生徒?学校?
学校も大変な時代になりました・・・

2024/04/03

夏休みの宿題「自由研究」の所有権は誰にある?生徒?学校?
学校も大変な時代になりました・・・


学校が誤って廃棄処分?

夏休みの宿題で提出した自由研究を学校が無断で廃棄してしまったとして、兵庫県内の公立中学校に通っていた、きょうだい2人と家族らが学校側に損害賠償を求める訴訟を起こしました。争点は自由研究の所有権が作った生徒にあるのか、それとも学校なのか。提訴から約3年半がたっても決着はついていません。
きょうだいは夏休みの課題として、光合成やバイオマスエネルギー、免震構造などをテーマに選び、実験道具もそろえて課題に取り組んだ結果、計6点の作品は市の「特選」となり、商業施設でも展示されました。作品がなくなっていることが判明したのは卒業後。両親の返還請求を受けて学校が調査した結果、6作品のうち5作品が所在不明となっていました。
きょうだいは両親とともに学校が無断で廃棄するなどしたことによって精神的な苦痛を受けたとして、令和2年秋、神戸地裁に提訴していました。
学校側は「作品は廃棄したものと思われる」としつつ、法的責任については真っ向から反論しました。教育施設である以上、「学校と生徒を対等な当事者と位置付けるべきではなく、民法は適用されない」と主張。自由研究を「生徒から学校に無償提供されたもの」と位置付け、「返却するか否かは担当教員の裁量に委ねられている」と違法性を否定しました。
神戸地裁は昨年2月、きょうだいらの主張を認め、自由研究の所有権は作成した本人に帰属しており、「学校への提出を無償提供と解釈する法的根拠はない」と判断。学校側の過失を認め、2万円の賠償を命じました。

最高裁の判断に注目

この判決に双方が控訴。大阪高裁の審理で、学校側は、複数の理科教員に聞き取った結果、自由研究を返却していない教員が大半で、「返還請求をしたのはこの家族が初めて」と強調。「教員には返却しなければならないとの認識がなかった」と訴えました。
今年1月、大阪高裁は1審判決を取り消し、きょうだいらの請求を棄却する逆転判決。大阪高裁は、作品の返却を前提としない運用がされてきたことは、学校側に所有権があることを裏付けているとして、「提出後の課題をどのように取り扱うかは教員が指導上の見地から決めるべきもの」と認定しました。
きょうだいらは、大阪高裁の判決を不服として最高裁に上告し、現在も係争中です。
なかなか難しい問題ですが、やはり所有権は生徒にあるというのが原則だと思います。生徒が自分でお金を出して材料を買い、自分で作って学校に提出したのであって、学校にタダであげたわけではないでしょう。
確かに、宿題や作文などの提出物を常に返却する慣習はありませんし、それを学校が全て保存するのも大変だと思います。しかし、一所懸命作って「特選」までとった自由研究を返してもらいたいという生徒の気持ちは理解できます。
この自治体では、問題が生じて以降、自由研究を原則返却する方針に変更したそうですから、この訴訟が一石を投じたことになります。
いずれにせよ、学校側の負担は大きく、先生方にとっても大変な時代になりましたね。これからは、学校は全部保存するか、提出する際に「いかに処分されても異議はありません」という所有権放棄の一筆を生徒側に書かせなくてはならなくなります。最高裁の判断が注目されます。それでは次号で!