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【タックル法律講話】死刑の執行をわずか2時間前に告知するのは憲法違反?!
死刑執行命令書にサインしない法務大臣がいることも大きな問題です

2024/05/02

死刑の執行をわずか2時間前に告知するのは憲法違反?!
死刑執行命令書にサインしない法務大臣がいることも大きな問題です


前日に告知された死刑囚が自殺した例も

「死刑の執行を直前に告知する現在の運用は憲法に違反する」として死刑囚2人が国に賠償などを求めた裁判で、4月15日、大阪地裁は死刑囚側の訴えを棄却しました。死刑囚2人は、死刑の執行がわずか2時間ほど前の直前に告知される今の運用では弁護士への接見や執行の不服を申し立てることができず、適正な手続きを保障した憲法に違反するなどと主張し、執行に従う義務がないことの確認や慰謝料などを求めていました。国側は、前日に告知すると死刑囚の心情の安定を著しく害し死刑囚が自殺した例もある、よって直前の告知は問題ない、と主張していました。
大阪地裁は「死刑囚は死刑執行を甘んじて受けるべき立場にあり、運用の一部のみを取り出して訴えることはできない」として死刑囚側の訴えを全面的に退けました。
そもそも執行の告知は前日が妥当なのか、それとも直前の告知が妥当なのか。これははっきり言って誰にもわかりません。死刑が確定した後、いつ執行するかは行政にある程度の裁量がありますから、よほどの裁量違反がなければ違憲とは言えません。
大阪地裁の判決理由にあるように、死刑が確定した以上、死刑囚は甘んじて執行を受ける立場にあるわけですから、運用は合憲だという判断は支持されるべきものだと思います。

死刑執行命令書にサインしない法務大臣たち

この件とは別に、死刑執行命令書にサインしない法務大臣がいることも大きな問題です。刑事訴訟法は「法務大臣は、原則として、死刑確定の日から6か月以内に死刑執行の命令をしなければならない」旨を定めています。ところが、この規定は努力義務的な訓示規定と解釈されていて、法務大臣によっては、このサインを引き延ばしているのが実態です。
かつて長期間にわたって死刑執行命令書にサインしなかった当時の江田五月法務大臣(民主党)は、国会で「署名しないことは命令義務違反であり、法の執行をしないことは閣僚としての職務怠慢ではないか」と追及されましたが、「死刑という人の命を絶つ極めて重大な刑罰の執行に関することであるため、6か月以内に死刑執行されなくても違法となるものとは考えられない」と答弁しました。驚くべき答弁ですね。
こうした間違った考えが根底にあるので、訓示規定という解釈がまかり通っているのです。江田氏は元裁判官でもあるにもかかわらず、法治国家の基本をないがしろにしているとしか思えません。
「死刑執行は人の命を奪う」ということで思考停止に陥っているのでしょうが、刑事訴訟法は「原則として、死刑確定から6か月以内に執行せよ」と定めているのです。それに反することがなし崩し的にまかり通っている現状はとても法治国家とは言えません。
「死刑を執行すべきでない」というのであれば、法律を改正して死刑を廃止するのが筋でしょうが、今まで廃止されていないということは、それが日本国民の大多数の民意だということです。法務大臣は、法治国家として適正な運用をしていただきたいと思います。それでは次号で!