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【タックル法律講話】グーグルマップ上のウソの口コミの削除求めて医師らが集団訴訟!
巨大プラットフォーマーの責任が問われています
国家はどこまで関与すべきなのでしょうか?

2024/06/03

グーグルマップ上のウソの口コミの削除求めて医師らが集団訴訟!
巨大プラットフォーマーの責任が問われています
国家はどこまで関与すべきなのでしょうか?



削除に応じないグーグル

グーグルマップに表示される「クチコミ」に不当な内容が投稿されても削除してもらえず業務が妨害されたなどとして、都内の医師など63の個人と団体がグーグルに対し、あわせて140万円あまりの損害賠償を求める訴えを起こしました。
医師らは、グーグルに削除を依頼しても対応されるのはごくわずかだとして、裁判を通じて悪意のあるクチコミやその対応により営業が妨害されて損害が出ていることを訴えるとともに、削除の基準をより明確にするよう求めています。
医師の一人は、クリニックのクチコミに「門前払いされた」、「検査できない」などと書き込まれ、星の数で示す評価も5段階のうち最低評価をつけられたということです。医師は投稿内容や日時などから、専門外の症状だったため別の医療機関を紹介したり、不必要な検査を求められて断ったりした患者が根拠のない投稿をしたとみて、クチコミの削除をグーグルに要求しました。しかし、グーグルからは、医師が投稿者と話し合って削除してもらうか、裁判所から削除を命じてもらうしかないと、メールで返答があったということです。
口コミなどに関連した相談は増加傾向にあり、総務省の「違法・有害情報相談センター」に令和4年度に寄せられた「クチコミ・ランキングサイト」への書き込みに関する相談は249件。平成30年度の2倍近くとなりました。
最近では、衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ)創業者の前澤友作氏がフェイスブックなどで自身になりすました詐欺広告が放置されているとして、運営するメタ社を提訴しました。
このようにグーグルなどの巨大プラットフォーマーの責任を追及する傾向が強まっています。巨大プラットフォーマーは投稿などを掲載することによって莫大な利益を得ていますから、プラットフォームへの掲載内容について適切な運営責任があることは明白です。政府はスマートフォン向けアプリ市場を支配するプラットフォーマーを規制する法案を今国会に提出する見込みです。


パターナリズム(父権主義)という考え方

某国のようにSNSを全面的に規制している独裁・専制体制ならこうした問題は起きないでしょうが、他方で、国民の表現の自由は大きく損なわれてしまいます。国家がサイバー空間を監視したり規制したりすることは、民主主義・自由主義陣営の国々では考えにくいことです。
法学的には、「強い立場の者が弱い立場の者を守ってあげる」というパターナリズム(父権主義)という考え方があります。国家が「お父さん」として、弱い「子供たち」(人民)を守ってあげるために、本人の意思よりも介入・干渉を重視する、という考え方です。自由放任では無軌道になり、犯罪の温床や謂れのない誹謗中傷の被害者が出てしまうので、国家が規制するということですね。
日本や欧米諸国は過度なパターナリズムは採用せず、自由を尊重しています。
しかし、放任していると度を越してしまい、嘘や誹謗中傷が氾濫します。プラットフォーマーが自主的に規制することが望ましいのですが、果たしてどこまで規制できるか。某国のように国家がサイバー空間を監視したり規制したりして国民の自由を著しく制限する体制は問題がありますが、プラットフォーマーへの一定の規制が必要な段階に来ているのでないでしょうか。それでは次号で!