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【タックル法律講話】「給与の減額は憲法違反」現役裁判官が国を相手に異例の提訴!
裁判所のブラックボックスに一石を投じるか?

2024/08/06

「給与の減額は憲法違反」 現役裁判官が国を相手に異例の提訴!
裁判所のブラックボックスに一石を投じるか?


「地域手当」も給与にあたるか?

「転勤で地域手当の支給率が下がり給与が減ったのは、裁判官報酬の減額を禁じた憲法80条2項に違反する」として、三重県の津地方裁判所の竹内浩史判事(61)が、国に約240万円の支払いを求めて、名古屋地裁に提訴しました。現職裁判官が国を相手に訴訟を起こすのは異例です。
記者会見した竹内氏は「(多くの判事が)大きな被害を受けているにもかかわらず、やむを得ないと受け入れている。地域ごとの支給率の差も不明確で、裁判で緻密に論争したい」と話しました。
訴状などによると、「地域手当は、地元企業の給与を基準に支給率が定められ、基本給に上乗せされるが、これは憲法が減額を禁止する裁判官の報酬に当たる」、「令和3年に名古屋高裁から津地裁に転勤後、地域手当が減ったのは憲法違反だ」「勤務地による不合理な差別に当たり、憲法が保障する法の下の平等にも反する」と主張しています。また、竹内氏は、「同期の裁判官と比べて不当に昇給を据え置かれる差別を受けた」とも主張しています。
憲法が裁判官の給料の減額を禁じているのは、裁判官の独立性を担保するためですが、問題は、基本給だけでなく、「地域手当」も保障されるのか?ということですね。 民間企業では地域手当に格差があるのは当然ですが、果たして裁判官の場合は、どういう判断になるのでしょうか。
竹内氏は退官前なので、思い切って問題提起のために訴訟を起こしたのだと思いますが、今まで誰も声を上げていなかったことからすると、かなりチャレンジングな行動ですね。


被害を受けるのは国民

裁判官の報酬問題や人事考課はブラックボックス化しており、これを裁判官が正す訴えは、ある意味、画期的なことです。裁判官は物言わぬ人たちで、人事権を握る最高裁の顔色ばかりを窺う裁判官、いわゆる「ヒラメ判事」が多いのが現状です。
裁判官の数は訴訟件数に対して絶対的に足りていません。膨大な数の事件を抱えている裁判官ばかりなので、物理的に処理できるものではありません。本来は、こうした現状を解決するために、待遇改善・人員増強を訴えるべきですが、公務員には労働組合がないので、マンパワー不足は全く改善されていません。
結局、処理できない数の案件を裁判官が抱えれば、裁判が遅れたり、審理が雑になったり、漏れのある判決が出されたりします。結局、被害を受けるのは、国民です。司法改革の名の下に、弁護士だけは増えすぎるほど増えましたが、肝心の裁判官と検察官は、全く増えていません。
残念ながら、最高裁は少数エリートの地位を捨てたくないために、自ら裁判官を増やそうという動きはせず、予算を勝ち取ろうともしませんね。日本の司法予算は諸外国に比べても圧倒的に少ないのです。そういう意味では今回の提訴は、一石を投じる行為だとも言えます。行方が注目されます。それでは次号で!