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【タックル法律講話】保護司の高齢化、担い手不足、リスクの増大・・・
「ボランティア」制度はもう限界です
プロフェッショナルな人材確保と体制強化を急ぐべきです

2024/10/01

保護司の高齢化、担い手不足、リスクの増大・・・
「ボランティア」制度はもう限界です
プロフェッショナルな人材確保と体制強化を急ぐべきです


今年5月、滋賀県大津市で、保護司の男性(60)が、更生を支援していた保護観察中の男(35)に殺害された。ボランティアで一生懸命に犯罪者の更生を支えてきた保護司が殺害されるというショッキングな事件です。
保護司は、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える民間のボランティアです。保護司法に基づき、法務大臣から委嘱された非常勤の国家公務員とされていますが、給与は支給されません。犯罪や非行をした人がスムーズに社会生活を営めるよう、釈放後の住居や就業先などの帰住環境の調整や相談を行っています。
保護司は全国に約4万7,000人いますが、うち4割弱が70歳以上で、高齢化や担い手不足が深刻化しています。
法務省は、保護司の要件や待遇、活動内容の見直しを進めています。先日、法務省の検討会から最終報告書案が示されました。検討会ではボランティアである保護司に報酬を支払う「報酬制」や、面会と啓発活動を分担する「分担制」の導入も議論されましたが、現役保護司らの反発もあり、最終報告書案では見送られました。
一方で、最終報告案では、66歳以下とされていた新任時の年齢の上限を撤廃し、雇用主らに対して保護司を兼職する職員への配慮を求める規定を保護司法に盛り込むよう提言しました。
また、前述の保護司殺害事件を受け、安全対策として、法務省職員である保護観察官が担当する対象者の拡大や、自宅以外の面会場所の確保などが盛り込まれました。さらに、保護司活動に伴う実費が十分に支給されず、「持ち出し」が生じている問題を解消するため、実費弁償金の充実を図ることも盛り込まれました。


保護司への国民的理解が不可欠

私が弁護士になりたての頃にも保護司が保護対象だった少年から刺されて死亡するという痛ましい事件がありました。それ以来ずいぶん経ちますが、保護司を巡る環境は全く変わっていません。
「ボランティア」ではやはり限界があります。保護司の高齢化の背景には「ボランティア」「無報酬」があると思います。現役の人は自分の仕事を抱えて手一杯ですから、ボランティアをする余裕はありません。
このままでは保護司制度自体の存続が危ぶまれます。保護司は非行少年や元受刑者の更生を支える役割を担っており、この制度が崩壊すれば、再犯が増えて最終的には国民の安心・安全が損なわれることになってしまいます。
この現状を変えるには、法務省職員であり給与が支給されている保護観察官の役割を拡充することが必要です。今の制度では保護観察官はあくまでも保護司をフォローする立場に過ぎず、現場は保護司のボランティア精神に依存してしまっているからです。
また、プロフェッショナルとしての保護司の人材を早急に育成し確保する必要があります。
今後、国民の関心が薄かった保護司制度にスポットを当て、この制度がいかに社会にとって重要な役割を果たしているのかということを広く知らしめるべきです。そうした国民的理解が予算化を後押しして、保護司制度の維持と正常化を進めることになるのではないでしょうか。それでは次号で!