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【タックル法律講話】増え続ける児童虐待!どうすれば悲惨な事件を防げるのか?
「代表者聴取」など検察・警察との連携強化が急務です。
2025/01/06
増え続ける児童虐待!どうすれば悲惨な事件を防げるのか?
「代表者聴取」など検察・警察との連携強化が急務です。
「代表者聴取」の強化を
児童虐待被害の防止のために、検察と警察、児童相談所(児相)の3者が連携し事情聴取を行う「代表者聴取」の強化が急務となっています。政府は平成30年、児童虐待防止などのために、代表者聴取の活用や3者の情報共有強化などを定めた総合対策を策定しました。しかし、児童虐待の児相への通報件数は令和4年度に過去最多を記録するなど、状況は依然として好転していません。
「代表者聴取」とは、虐待などを受けた児童に対し、検察と警察、児相の3者もしくは2者が面接官として児童らから聞き取りをし、聴取内容を共有するものです。「司法面接」とも呼ばれています。
以前は検察官や警察官、児相の職員が、それぞれの立場で必要な内容を児童から別々に聞き取ってきましたが、聴取回数が無駄に増えて負担が重くなっていました。児童は誘導や暗示の影響を受けやすいので、証言の信用性が損なわれるリスクも高かったといわれています。最初の段階から検察・警察が関与して代表者聴取を行なえば、そのようなリスクも軽減されるでしょう。
犯罪白書によると、代表者聴取のうち、3者が連携した聴取は平成28年度に204件と少なかったのが、令和3年度は7倍超の1529件へと増加。検察と警察の2者が連携した聴取も2417件に増えています。
一方で、4年度に児相が受け付けた通報件数は21万9170件と、過去最多を記録しています。そのうち摘発に至ったのはわずか2181件ですが、強制わいせつ事件など、被害児童の証言内容が重要な意味を持つ事件も目立ちます。
愛知県犬山市のアパートで今年5月、小1の女児が内臓を損傷する激しい暴行を受けて死亡し、母親とその交際相手が傷害致死罪などで起訴されました。児相は事件前に虐待を察知して2度にわたって女児を保護していましたが、いずれも解除。後から代表者聴取が行われましたが、女児から具体的な証言を得ることができず、最悪の事態を防げませんでした。
課題は人員不足
全国には234カ所の児童相談所、154カ所の一時保護施設数があり、子どもの保護や親の指導に当たる児童福祉司は約5780人ですが、経験の浅い職員が多く、数年ごとの異動が繰り返されるため、職員の経験をどう引き継いでいくのかが課題とされています。
児相としては、これまで親側から「躾の一環だ」と言われれば、引き下がってしまい、見過ごしてしまうケースも多かったのですが、最初から「代表者聴取」を導入して検察・警察の関与が進めば、悲惨な事件が未然に防げる可能性は高まるでしょう。
児相だけでは対応できないのが現実なので、検察・警察が最初から関与して、虐待の証言や証拠を掴めば、加害者をいち早く逮捕し、悲惨な結末を防ぐことができます。
ただし、検察・警察も、ただでさえ人員不足で忙しい中、どこまで対応できるかが課題です。増員や制度的な手当てを早急に検討すべきですね。
今年もよろしくお願いいたします。それでは次号で!