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【タックル法律講話】新人弁護士の3分の2が東京に集中!
秋田や高知など地方8会は新規登録ゼロ!
地方の弁護士過疎は司法サービスの低下を招きます。
2025/07/03
新人弁護士の3分の2が東京に集中!
秋田や高知など地方8会は新規登録ゼロ!
地方の弁護士過疎は司法サービスの低下を招きます。
市場原理には逆らえず・・・
日本弁護士連合会によると、今年新たに弁護士となった司法修習77期のうち、東京の3つの弁護士会(東弁、一弁、二弁)への登録者が4月時点で全体の66・9%に上ったことが分かりました。一方、秋田や高知など8弁護士会では一人も登録がなく東京一極集中が顕著に。地域の司法サービスが低下するとの懸念も出てきています。
4月までに新規登録した77期の弁護士は1564人。そのうち東京弁護士会が297人、第一東京弁護士会が447人、第二東京弁護士会が303人となり、東京3会で3分の2を占めるという極端な状況です。
日弁連で若手弁護士の支援に取り組む山本昌平弁護士は「地方の弁護士会の委員会活動に支障が出たり、国選弁護の人手が足りなくなったりする可能性がある」と指摘。東京の大手事務所が積極的に青田買いをして内定が早期に出ることなどから、司法修習をした地方でそのまま登録する人が以前より減っていることが一因です。
もともと司法改革で弁護士の数を増やした目的は、「全国津々浦々に法律サービスを提供する!」というものだったはずですが、当初からこうなることは目に見えていたとも言えます。弁護士といえども市場原理には逆らえず、ヒト・モノ・カネが東京に集中して地方が疲弊している現状と軌を一にしているだけのことです。医療界で無医村が増えていることと同じ現象です。
司法サービスの質と量が低下する
市場原理の中に弁護士を放り込んでしまった当然の帰結ではありますが、そうなると地方の国民にツケが回ることになります。日弁連が運営する「ひまわり相談」や法的支援を提供する公的機関「法テラス」などがありますが、地方の弁護士は全く足りていないのが現状です。
弁護士は医師と同じく、完全な市場原理で淘汰されてしまってよい存在ではなく、刑事事件、民事事件における重要な社会インフラです。心ある弁護士たちが何とか歯を食いしばって、経済的利益が見込めない事件であっても、「人権擁護・社会正義」のために汗を流しているのが実情です。
刑事訴訟法で決まっている国選弁護人の場合、もらえる弁護費用はわずか8~10万円程度であり、時間と労力を考えれば、採算は合いません。
かと言って、「とてもそんな費用ではやれない」と弁護士会が突っぱねれば、国は「それならば司法書士に刑事弁護権を与えてやってもらいましょう」となりかねないので、弁護士会は歯を食いしばって刑事弁護権を死守しなくてはならいという状況になっています。実際、2003年には、140万円を超えない簡易裁判所の民事訴訟代理権が司法書士にも与えられてしまっています。刑事弁護権は何としても死守したい、というのが日弁連の考えです。
サービスの優劣を比較検討しにくいのが法律業務ですが、弁護士過疎となれば、司法サービスの質と量が低下することは明らかです。そのツケは地方の国民が払うことになりますが、果たしてそれでよいのでしょうか?公的な支援も含めて、全体的な制度設計を練り直すことが急務です。それでは次号で!