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【タックル法律講話】弁護士の過剰供給の一方で、増えない裁判官・検察官
国民不在の「司法改革」を早急に見直すべきでは?
2025/10/02
弁護士の過剰供給の一方で、増えない裁判官・検察官
国民不在の「司法改革」を早急に見直すべきでは?
「司法改革」の本来の目的は?
日本弁護士連合会(日弁連)によると、令和6年度に司法修習を終えた77期生は計1826人。このうち、弁護士に登録したのは1564人、裁判官は90人、検察官は82人となりました。77期で判事補(裁判官)として採用されたのは全体の4・9%でした。76期は5・8%、72期5・0%、67期5・1%で、判事補の総定員が8割しか埋まらず、志望者数も横ばい傾向にあり、相変わらず裁判官不足が続いています。
そもそも1999年から始まった「司法改革」と法曹人口の増員は、それまで問題となっていた裁判の長期化、裁判所の行政寄りのスタンス、弁護士費用の不透明さなど、国民に十分な法的サービスが供給できていなかったことを反省し改善するためにスタートしたはずでした。また、「裁判に民意を」の掛け声のもと、裁判員制度も始まりました。
しかし、結果は大失敗です。結局、裁判官・検察官の数はほとんど増えていません。裁判官の数はずっと定員を下回ったままで、判事補と呼ばれる任官10年未満の若手は10年前に比べると2割も減っています。検察官も同じです。
裁判官と検察官の数が増えなければ、民事や刑事の裁判のスピードは早くはなりません。その反面、大量かつ質の低い弁護士が粗製乱造され、明らかな供給過多で仕事を奪い合うことになり、「能力が低い」「稼げない」弁護士も多くなっています。
裁判員裁判も長期化
日本の司法予算は先進国でも一番少ないといわれています。ところが、当事者である裁判所や検察庁からは、「もっと人員を増やせ、予算を増やせ」という声はそれほど大きくありません。それは現場から定員増の声が上がっていないからです。
特に、公務員である裁判官の数が増えない背景には、裁判官の「少数精鋭」という変なエリート意識があります。人手不足で仕事が回らないのであれば、現場の裁判官が「定員を増やすべきだ」という声を上げるはずなのですが、そういう声を上げると、人事権を持つ最高裁から無能扱いされることを恐れているという側面があります。
裁判官は淡々と自分のペースで仕事をこなしていれば、大過なく過ごせるわけですから、審理が雑になったり、遅くなったりしても構わないのでしょう。そのツケを払わせられるのは、長期間待たされたり、雑に処理されたりする国民です。
また、裁判員制度の弊害もあります。安倍元首相を殺害したとされる山上徹也被告の裁判は8回もの公判前整理手続きを経て事件から3年経ってようやく今年の10月28日に初公判が開かれます。裁判員制度の導入前は、逮捕から20日以内に起訴しなければならず速やかに公判が開かれていたのですが、裁判員制度導入後は、あまりにも公判前整理手続に時間がかかり過ぎるケースが目立っています。
このように、当初の理念からかけ離れた「司法改革」と法曹人口の増員は、一度、立ち止まってリセットすべきです。国民不在の「司法改革」は早急に見直すとことが必要です。それでは次号で!