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【タックル法律講話】家賃を滞納した借主への強引な取立は違法!でも、「被害者」という呼び方にも、何となく違和感があります。

2010/01/24

家賃を滞納した借主への強引な取立は違法!
でも、「被害者」という呼び方にも、何となく違和感があります。


かなり悪質な取立


厳しい家賃の取立で精神的苦痛を受けたとして、福岡市の男性が家賃保証会社とその社員に慰謝料を求めていた裁判で、昨年十二月、福岡地方裁判所は、会社側に慰謝料など二十二万円の支払いを命じましたね。
「家賃保証会社」とは、借主の保証人になり、借主が家賃を滞納した場合に家主に対して肩代わりするかわりに、借主からその分を取り立てる業者です。最近の不況で家賃の滞納者が急増する中、家主にとっては、滞納家賃の立替や明渡し請求を代行してくれるので、頼れる存在となっているようです。
福岡地裁の判決によれば、男性は、家賃保証会社の保証のもとに、敷金・礼金ゼロのアパート(いわゆるゼロゼロ物件)を五万円で借りましたが、二ヵ月後には家賃が払えなくなり、その後三ヶ月分の家賃を滞納し続けていたところ、家賃保証会社の社員らが自宅に来て、午後九時から翌午前三時頃までの六時間、執拗に支払いを求め、親族や知人に金を借りるように迫ったり、車内に軟禁したりしたそうです。
要するに、借金の悪質な取立と同じで、払わない方も悪いのですが、かと言って、あまりに悪質な取立はダメだ、ということなのです。
このような悪質な「追い出し屋」については、「被害者」救済のために、全国各地で弁護士らの支援団体が結成されているそうです。

「被害者」は誰?

たしかに、日本は法治国家である以上、違法な取立は許されるべきではありません。しかし、家賃を滞納しているのに居座り続ける人を「被害者」というのも、何となく違和感がありますね。家賃も払ってもらえないのに部屋を明け渡してもらえない大家さんも、自分の財産を侵害されているという点で、「被害者」だと思いますが。
最近、「借りた金は返す」、「物を借りたら料金を払う」、そんなあたり前のモラルが薄れてきている気がします。私も弁護士ですから、法律的に対抗できる手段があればそれを駆使すべきだとは思いますが、「払うべきものを払ってない」という事案の場合は、やはり、躊躇します。経済は、信用すなわちモラルで成り立っているのですから、モラルが崩壊すれば、経済も崩壊します。一昨年のリーマンショック以降、ますます、その傾向が強まっているように感じます。世界経済の復活は、モラルの復活にあり?

今年もご愛読よろしくお願いします。それでは次号で!


経済誌フォーNET掲載月:2010年1月号