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【タックル法律講話】村木厚子・元厚労省局長に無罪判決! しかも、主任検事が証拠隠滅で逮捕される! 日本も「雑な時代」になりました。

2010/10/29

村木厚子・元厚労省局長に無罪判決!
しかも、主任検事が証拠隠滅で逮捕される!
日本も「雑な時代」になりました。


裏付け捜査無し?!

先日、障害者団体向け郵便料金割引制度の悪用事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた村木厚子・元厚生労働省局長に、大阪地裁は無罪判決(求刑は懲役一年六月)を言い渡しましたね。
村木氏は、障害保健福祉部企画課長だった頃、障害者団体「凜(りん)の会」を郵便割引制度の対象と認めるニセの証明書を、当時の部下だった上村勉被告=公判中=に作成させたとして逮捕・起訴されていました。
裁判所は、「村木氏の関与があった」と供述した上村被告らの供述調書の大半を、「検事の誘導があった」として証拠採用せず、村木氏の関与はなかったと判断して無罪を言い渡しました。
そして、検察は「控訴審で無罪が覆る可能性は低い」として、あっさり控訴を断念し、村木氏の無罪が確定しました。
この事件では、検察は、「凛の会」元会長・倉沢邦夫被告が民主党の石井一議員に証明書発行の口利きを依頼したと主張していましたが、その時間帯には、石井議員は千葉のゴルフ場にいたことが判明し、検察のストーリーはもろくも崩れ去りました。村木氏を起訴する約四ヶ月前に、あらかじめ検察は石井議員に任意で事情聴取をしているにもかかわらず、石井議員の行動を裏付け捜査していなかったのです。結局、検察が裏付け捜査をやっていなかったということが露見した裁判でした。
共犯者らが供述をひるがえすことはよくあることですが、きちんと裏付け捜査をしていれば、検察は勝てますし、逆に、無実の人を不当に起訴することもないのです。 ところが、今回はあまりにもお粗末な捜査であり、同じ法曹である私も呆れるばかりです。最強の捜査機関と言われる特捜部がこんなことでいいのでしょうか?「供述のウラを取る」という捜査の基本を怠った?手抜き?いずれにせよ、「雑」な捜査です。しかも、特捜部の前田恒彦主任検事が、フロッピーディスクを改ざんしたとして証拠隠滅容疑で逮捕されるという前代未聞の大失態…。

プロがいない、「雑」な時代に…

捜査が雑なら、政治も雑です。民主党政権は、国内外で課題が山積みであるにもかかわらず、国会も委員会もまともに開こうとせず、全く議論がなされていません。本来、国会は、鋭く利害対立する問題を、議論を通じて合意形成していく場であり、そのためにプロである政治家がいるのです。ところが、議論もしない(する能力がない?)素人議員ばかり…。
裁判所も雑になりました。裁判員制度といういい加減な制度で、素人の裁判員が短期間で判決を出して、いっちょ上がり!しかも、控訴審は裁判員制度の適用はないのですから、一体、何のためにやっているのか?バカバカしくなります。
マスコミも、裏付け取材なしに、政府や捜査機関からの情報をタレ流し。論調も「右へ習え」で同じようなものばかり。そこには、一つの事実を多角的に検証しようというジャーナリストとしてのプロ意識はありません。また、弁護士、医者も、人数の増加により、プロとしての能力の劣化が危惧されています。
「緻密さ」「真摯さ」「誠実さ」を誇った日本ですが、タガがはずれ、どんどん「雑」になっている気がします。プロがいなくなるツケは、結局、我々国民にはね返ってきます。それでは、次号で!


ビジネス情報誌「フォーNET」掲載:2010年10月号