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【タックル法律講話】北九州市で続発する連続傷害事件! 「暴力団立入禁止」の標章制度の波紋か? 市民を前面に出すのではなく,警察の捜査力を上げる法整備が必要です。
2012/10/04
北九州市で続発する連続傷害事件!
「暴力団立入禁止」の標章制度の波紋か?
市民を前面に出すのではなく,警察の捜査力を上げる法整備が必要です。
市民を前面に出す危険
先日,北九州市で飲食店の女性店主らが刃物で顔を切りつけられる事件が続発しましたね。女性店主らは「暴力団立入禁止」の標章を店舗に掲げて暴排活動に取り組んでいました。また,九月十日には標章を掲示する百軒近くの飲食店に、「標章なんか貼りやがって!」「次はお前だ!」などと脅迫電話がありました。いずれも犯人は捕まっておらず,動機,背後関係は不明ですが,警察は標章に反発する動きとみて捜査をしています。
八月一日から福岡県暴力団排除条例が改正され,飲食店が「暴力団立入禁止」の標章を掲げていれば、暴力団が立ち入った場合、中止命令が出され,従わなければ50万円以下の罰金,となりました。警察の指導により多くの飲食店がこの標章を掲げるようになった矢先に,今回の事件。こんな事件が続くと,飲食店主らが「こわい」「自分達も被害に遭うのでは・・・」と恐れるのも無理もないことであり,実際に,標章を紙で貼って隠したり,標章登録を辞退する経営者も続出しています。
北九州市では,以前にも,「暴力団お断り」を掲げたクラブに,糞尿が撒き散らされるなどの様々な嫌がらせがなされ,最後には手榴弾が投げ込まれ閉店に追い込まれる,という悲惨な事件がありました。条例の標章制度も,まずは,標章を貼った市民が矢面に立つという構造になっており,このような事件が起こる可能性は予想できたとも言えます。
最近,全国各地で暴追大会,暴排運動が盛んですが,暴力団対策は警察による逮捕・取締りが最大の対策であって,それが不十分なままに,安易に市民を前面に出すことには大いなる危険が伴います。いくら暴排運動を進めても,実際に活動する市民は丸腰であり,誰も守ってくれずに被害にあってしまうのであれば,本末転倒です。
政治家はなぜ何もしないのか?
一方で,マスコミでは,「警察は,何をやってるんだ!しっかりしろ!」と警察批判の論調も目立ちますが,現場の警察が怠けているはずもなく,一生懸命やっていると思います。しかし,今の法律では,これ以上,情報が取れないのです。捜査の限界です。いかにして情報を取るか?海外のマフィア対策を参考に,暴力団の非合法化,司法取引,おとり捜査,通信傍受の拡大などの実効性ある捜査手法を法律で作らなければなりません。警察といえども,法律の範囲内でしか捜査できませんから,警察の捜査力を強化するには法律を改正するしかないのです。
そして,法律は国会で作るのですから,本来は,国会議員,政治家の仕事です。北九州選出の国会議員が率先して取り組むべき課題なのですが,何故か,誰もメッセージすら出していません。マスコミも,批判するなら動かない政治家を批判すればいいと思うのですが・・・。
政治の怠慢でツケを払うのは,いつも国民。国民もしっかりと政治家を選ばないと,自分達の生命,身体,財産を守ることはできませんね。それでは,また次号で!
ビジネス情報誌「フォーNET」掲載:2012年10月