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【タックル法律講話】続々と出される、一票の格差「違憲」判決! このまま放置すると、選挙が無効に?? でも、そもそも、「一票の価値の平等」って金科玉条なの?

2013/04/08

続々と出される、一票の格差「違憲」判決!

このまま放置すると、選挙が無効に??

でも、そもそも、「一票の価値の平等」って金科玉条なの?


「憲法違反ではあるが、選挙は無効としない」

昨年十二月の衆院選の一票の格差(最大二・四三倍)をめぐる選挙無効訴訟で、今年三月以降、東京、札幌、仙台、名古屋などの各高裁で、続々と、「選挙は憲法違反である。ただし、選挙は無効としない。」との判決が出ていますね。

最高裁が、以前から、「憲法違反の状態を解消しなさい!」と度重なる警告をしてきたにもかかわらず、いつまでたっても一票の格差を解消しない国会の怠慢に対して、いよいよ堪忍袋の緒が切れてきた状況です。

ただ、本来、憲法違反であれば「選挙は無効、やり直し!」となるはずですが、「事情判決」という考え方を使って、「選挙は無効としない」としました。「事情判決」とは、「取り消すと著しく公益を著しく害する場合は、取り消さないことができる」という判決です。要するに、選挙が無効になると、定数配分を是正できなくなるし、それまで成立した法律なども無効になるし、大騒ぎになってしまうので、無効にはしない、というものです。

しかし、この「事情判決」を裁判所がいつまでも使い続けていると、司法に対する国民の信頼が失われてしまいます。「憲法に違反しても、無効にならない!」「最高裁といっても、全然たいしたことない!」と。この状態は、さすがに、司法としても見過ごすわけにはいかないのです。

ですから、近い将来、最高裁が、伝家の宝刀を抜いて「選挙は無効!」と宣言してもおかしくない緊迫した時期に来ているといえますね。


「一票の価値の平等」は、金科玉条か?


このような司法の警告を、国会は真摯に受け止め、「一票の格差」を是正する取り組みをしなくてはなりません。

ただ、一方で、そもそも、「一票の価値の平等」という考え方が金科玉条なのか?本当に日本にマッチしているのだろうか?という根本的な疑問もあります。

「憲法で認められているから」と言ってしまえばそれまでですが、やはり、地域の実情は無視できません。人口密集地か、過疎地か?都市部か、山間部か、商業地か、農村地か?地域の歴史的背景は?などを捨象して、全く均質化した頭割りの「平等」では、かえって地域の声が国政に反映されないのではないでしょうか?「平等」であれば何もかも素晴らしいとは限りません。

「道州制」推進派のような「都道府県」の垣根を取っ払い、全てをボーダーレスにしていこうという思想とも相まって、何となく、「根無し草」のような国民が増えていくのでは?と危惧してしまいます。一票の重みは尊重しつつも、日本の歴史と特性に根ざした選挙制度を考えなくはならないと思います。それでは、また次号で!


ビジネス情報誌「フォーNET」掲載:2013年4月